佐藤 等(さとう ひとし)
佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー [事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。
清水 祥行(しみず よしゆき)
1968年、兵庫県西宮市うまれ。同志社大学卒。
Dサポート株式会社代表取締役、ナレッジプラザ・ドラッカー読書会認定ファシリテータ、一般財団法人しつもん財団認定ビジネス質問家、
経済産業省登録中小企業診断士(平成8年登録)。
楽天大学にて「もし楽天店舗さんがドラッカーのマネジメント論を学んだら」講師を務める。
風の読めない時代である。組織運営、人事、事業の方向性。トップマネジメントの悩みは尽きない。
この記事では、明日を創造するすべての経営者のために、ピーター・F・ドラッカーの名言を一挙に紹介する。
なぜ、世界中の経営者がドラッカーを指針としたのか。この記事を読めば、きっとあなたも、その理由を知ることができるだろう。
ドラッカーから学べるのは、ビジネスのテクニックではなく、“人間学”に近い原理原則である。テクニックではどうにもならないビジネスの本質を身に着けたいのなら、ドラッカーはきっと、あなたの「師」となってくれるに違いない。
ドラッカー名言集
企業にも企業以外の組織にも、本当の資源は一つしかない。人である。
『マネジメント』
人という資源を生かせるかどうかで事業の命運が決まる。仕事の仕組みを整えるだけでは不十分だ。本当に大変なのは、人を創造的で生産的な人材に成長させ、自主性の高い組織にすることである。
発展とは資力ではなく人間力の問題である。
『マネジメント』
組織や社会の発展は、人の成長がカギを握っている。イノベーションの本質はテクノロジーではなく、「貢献」意識にもとづいた価値創造行為である。
仕事を仕事の論理に従って編成することは、第一の段階にすぎない。
第二のはるかに難しい段階が、仕事を人に合わせることである。人の力学は仕事の論理とは著しく異なる。
『マネジメント』
考え方も価値観も異なる人々とビジョンを共有し、一丸となるには、「人」という動物をよく理解するところから始めなければならない。ドラッカーの「マネジメント」とは、単なる組織運営のテクニックではなく、ある種の“人間学”なのである。
仕事ができない者が駄目な人間というわけではない。間違った場所にいるだけである。
(中略)したがって、仕事のできない者が生産的となり成果をもたらす所がどこかを考え、「君は間違った場所にいる。君の場所はあそこだ」といってやることが、マネジメントの仕事である。
『マネジメント』
仕事ができない者を切り捨てるのは簡単かもしれない。では、仕事ができる有能がやってくるのを待ち続けるのが正解なのか。そうではない。組織には、お互いの強みを生かしあい、互いの弱みを打ち消しあう機能がある。この組織に特有の機能を活用するには、マネジメントが必要である。
仕事と人のマネジメントに失敗したのでは、いかなる成果といえども、幻影というべきであって無意味である。
そのようなことでは、競争力を失うほどにコストは上昇する。
『マネジメント』
マネジメントをないがしろにしていると、波に乗っているだけの企業になってしまう。波に乗っているだけの企業は、ちょっとした横風であおられて沈んでしまう。
事業が成長してくると、おそろしく忙しくなる。
成長はいろいろと問題をもち込む。生産が間に合わない。マネジメントが追いつかない。
『ネクストソサエティ』
事業が拡大してくると、組織にひずみが生じ、ヒトやカネに関するさまざまな問題が“成長痛”となって現れてくる。しかし、そこにこそチャンスがある。マネジメントは地に足のついた事業を行うために不可欠である。
私は50年間、起業家と仕事をしてきた。八割はだいたい同じパターンをたどる。
半年に三倍という異常な速さでの成長ではなく、安定的で持続可能な成長であっても、創立四年後にはマネジメント上の問題にぶつかる。
『ネクストソサエティ』
状況は日々刻々と変わる。昨日うまくいったことが、今日も明日もうまくいく保証はない。過去に整備した仕事の論理は、すぐに陳腐化する。組織は絶えず変わり続けなければならない。
一万個納入できるなら注文すると言われたら、大変かと思うかチャンスかと思うか。
チャンスと思うが大変とも思うという答えだったら、もうお宅はマネジメント能力を越えていると言ってあげる。
『ネクストソサエティ』
ドラッカーは数えきれないほどの事業家と仕事をしてきた。組織がマネジメントの限界をむかえているかどうか、肌で感じることもできたのだろう。
人を問題や費用や脅威として見るのではなく、資源として、機会として見ることを学ばなければならない。
管理ではなくリードすること、支配ではなく方向づけることを学ばなければならない。
『マネジメント』
「人を信用しない」ことを前提につくられた仕組みは、人から創造性と自発性を奪う。モチベーションの喪失は、怠慢と不正を招く。スタッフを囚人のように管理する仕組みは、組織を崩壊へと導くのである。
個人の価値と願望を組織のエネルギーと成果に転換させることこそ、マネジメントの仕事である。
『マネジメント』
マネジメントとは何なのか?人が誰でも持っている「貢献」の意識を呼び覚まし、そのエネルギーで組織を駆動させ、世の中に価値を生み出し続けるための人間学である。
プロフェッショナルとしてのマネジメントの必要性を世界で最初に理解したのが渋沢だった。明治期の日本の経済的な躍進は、渋沢の経営思想と行動力によるところが大きかった。
『マネジメント』
“マネジメントの父”と称されるドラッカーにとって、渋沢栄一は特別な人物だった。なぜなら、渋沢のものの見方・考え方にこそ、マネジメントの本質があるからだ。渋沢栄一を知れば、ドラッカーのことを深く理解できるだろう。
あらゆるマネジメント上の間違いは、人としてのマネジメントによるものである。
人としてのマネジメントのビジョン、献身、真摯さが、マネジメントの成否を決める。
『マネジメント』
組織をマネジメントするには、人としてどうあるべきかが大切だとドラッカーはいう。この「人として」という根本的な発想を忘れ去り、効率や利益だけを追求した組織は、犯罪や不正を犯すか、倒産する。
先進国におけるこれからのマネジメントの最大の課題は、知識の生産性を高めることである。
『マネジメント』
新しいテクノロジーが生産性を決めるのではない。知識を使い、成果をあげる労働者が、社会や組織の発展を担う原動力となる。現代においては、知識こそが生産性のカギを握る唯一の資源である。
知識は正しく適用したとき、最も生産的な資源となる。
逆に間違って適用したとき、最も高価でありながら最も非生産的な資源となる。
『マネジメント』
知識という資源は、形がなく、また際限がないため、方向性を間違えるととんでもなく非生産的で高コストの資源となってしまう。だからこそ、組織は知識の適切な使い方をマネジメントしなければならない。
花形セールスマンの生産性をさらに向上させる最善の道は、セールスマン大会で成功の秘訣を語らせることである。
外科医の成果を向上させる最善の道は、地域の医者の集まりで自らの仕事について語らせることである。
看護師の成果を向上させる最善の道は、新人の看護師に教えさせることである。
『プロフェッショナルの条件』
知識を使う現代人(知識労働者)が成果を向上させる近道は、“人に教える”ことである。他者へのアウトプットこそ最良の教材である。
継続学習によって人は自らの仕事ぶり、基準、同僚の仕事を知ることができる。仕事を「われわれの仕事」として見ることができるようになる。
『マネジメント』
部下の自主性を育み、組織の目線で仕事について考え、意思決定できるようにするカギは、継続学習である。
知識は急速に陳腐化する。したがって、専門的な継続教育が成長分野となる。
『ネクストソサエティ』
知識は常に更新される。古い知識に執着していると、時代に取り残される。継続学習は、知識の陳腐化を防ぐ。学びに終わりはない。
仕事において成果をあげるには、仕事に責任をもたなければならない。
そのためには、(1)仕事を生産的なものにしなければならない、(2)情報をフィードバックしなければならない、(3)学習を継続して行わなければならない。
『マネジメント』
成果をあげる能力は、「責任」を与えることで鍛えられる。能力があるから責任を与えるのではない。責任を与えるから成果のための能力が備わっていく。責任が人を育てるのだ。
成果をあげられなければ、仕事や貢献に対する意欲は減退し、九時から五時までただ身体を動かしているだけとなる。
『プロフェッショナルの条件』
成果にこだわるのは、カネのためではない。成果なき仕事ほどむなしいものはなく、人のやりがいや創造性をも奪ってしまうからだ。
成果をあげることは一つの習慣である。習慣的な能力の蓄積である。
『プロフェッショナルの条件』
成果をあげる人間と、成果のあがらない人間。一体なにが違うのか。ドラッカーいわく、成果をあげる能力は才能ではなく、日常的に仕事に対してどう考えて行動しているのかという、「習慣」の問題だという。凡人でも成果を出せるようにするのがマネジメントなのだ。
成果をあげるためには、貢献に焦点を合わせなければならない。
手元の仕事から顔をあげ、目標に目を向けなければならない。
「組織の成果に影響を与える貢献は何か」を自らに問わなければならない。
すなわち、自らの責任を中心に据えなければならない。
『プロフェッショナルの条件』
組織の成果は、組織の“外”にいる顧客である。上司や同僚の評価ではない。企業は顧客に貢献するための社会機関だとドラッカーはいう。「貢献」が共通言語になった組織ほど強いものはない。
成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。
そうすることによって、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。
『プロフェッショナルの条件』
意見の不一致や対立を恐れてはならない。むしろ意見が合わないことのほうが健全である。人はみな、異なる目で異なる現実をみている。自分が気づけなかった問題を、誰かがみてくれているかもしれない。意見の不一致こそ、組織が盲目になることを防ぐ処方箋である。
何よりも成果をあげるエグゼクティブは、自分自身であろうとする。ほかの誰であろうとはしない。
自らの仕事ぶりと成果を見て、自らのパターンを知ろうとする。「他の人には難しいが自分には簡単にやれることは何か」を考える。
『経営者の条件』
成果をあげるには、「なりたい自分」ではなく「貢献できる強み」に目を向けなければならない。本当は違うのに、自分が強みだと思い込んでいる可能性もある。検証とフィードバックを繰り返し、おのれの真の強みを知ることができる。
自らの強みを生かそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要を認識する。事実、それ以外に成果をあげる方法はない
『経営者の条件』
強みがわかったのなら、強みを生かせる場所で貢献するべきである。部下に対しても同様である。営業力に強みがあるなら、仕事中に余計な事務処理を行わせてはならない。それだけで組織の機会損失が膨れ上がる。
集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。
そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」と問うことである。
『経営者の条件』
惰性で行っている仕事はないだろうか?やらなくていい仕事に時間を奪われていないだろうか?定期的に仕事の仕方を見直し、前向きに“廃棄”しなくてはならない。さもなければ、知識の生産性が著しく低下する。
老廃物は捨てなければならない。人の身体はそうしている。ところが、組織では強い抵抗が出てくる。容易ではない。
しかし、廃棄の効果は大きい。組織の一人ひとりの心構えと組織そのものの姿勢を変える。
『ネクストソサエティ』
過去に執着してはならない。過去に成果はない。仕事の価値は、明日の価値を創造できるかどうかである。
人に成果をあげさせるためには、「自分とうまくやっていけるか」を考えてはならない。
「どのような貢献ができるか」を問わなければならない。
「何ができないか」を考えてもならない。
「何を正常によくできるか」を考えなければならない。
『プロフェッショナルの条件』
人の強みを生かすことは、マネジメントの至上命題である。組織における人間関係は、仕事の成果をベースに考えなければならない。
弱みに焦点を合わせることは、間違っているだけでなく、無責任である。
上司は、組織に対して、部下一人ひとりの強みを可能なかぎり生かす責任がある。
『プロフェッショナルの条件』
人の強みを生かし、弱みを弱みでなくすることは、マネジメントたる者の責任である。
企業、政府機関、病院のいずれの世界においても、今日の若い高学歴者のもっとも困った点は、自らの専門分野の知識で満足し、他の分野を軽視する傾向があることである。
『プロフェッショナルの条件』
知識は知識と結合することで意味をもつ。見識を広め、世の中の動きに常にアンテナを張り巡らさなければならない。なぜなら、社会の変化にこそ、これまでの知識を応用して価値を創造するチャンスがあるからである。
貢献に焦点を合わせることによって、専門分野や限定された技能や部門に対してではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。
『プロフェッショナルの条件』
貢献が知識や技術の価値を決める。いま組織が成果をあげるためには、どんな学びが必要なのか?それを考えられるようになったとき、人はみずから学びの幅を広げ、外の世界に目を向けられるようになる。
組織の中に成果は存在しない。すべての成果は外の世界にある。
客が製品やサービスを購入し、企業の努力とコストを収入と利益に変えてくれるからこそ、組織としての成果があがる。
『プロフェッショナルの条件』
官僚制組織は、人々の関心を組織の内部(人間関係・派閥・自己評価)に向けさせてしまう。組織の内部に力を注ぐと、外の世界とのズレが大きくなり、気づいたときには手遅れになる。
組織の中に生ずるものは、努力とコストだけである。
『プロフェッショナルの条件』
組織が大規模化してくると、スタッフの関心が組織の内部に向きやすくなる。貴重な時間と労力を、成果の存在しない組織内部に注ぐことになる。
貢献に焦点を合わせるということは、責任をもって成果をあげるということである。
貢献に焦点を合わせることなくしては、やがて自らをごまかし、組織を壊し、ともに働く人たちを欺(あざむ)くことになる。
『プロフェッショナルの条件』
関心が「カネ」「成績」「上司の評価」に向かってしまうと、組織の崩壊が始まる。貢献に焦点を合わせるということは、視座を高くあげるということである。
自らの仕事や他との関係において、貢献に焦点を合わせることによってよい人間関係がもてる。そうして人間関係が生産的となる。生産的であることが、よい人間関係に唯一の定義である。
『経営者の条件』
組織が陳腐化していく原因のひとつは、“馴れ合い”である。スタッフ同士の仲がいいのは結構なことではあるが、仕事とは関係のない世間話やプライベートなところで仲がいいだけでは、成果には結びつかない。仕事で成果を出すという目的のために互いを高めあい、弱みを打ち消しあう信頼関係こそ、真の生産的な人間関係である。
「どのような貢献ができるか」を自問しなければ、目標を低く設定するばかりでなく、間違った目標を設定する。
『経営者の条件』
高い目標が人を成長させる。視座の高さが、その後の成長の行方を決めるのである。
成長に最大の責任を持つ者は、本人であって組織ではない。
『非営利組織の経営』
与えられるのを待つ受け身の姿勢では、いつまでたっても成長できない。組織は“学校”ではなく、あくまでも“自己実現の場”である。目標を高く掲げ、みずからすすんで責任を負い、成果をあげるために知識を活用していかなければならない。貢献意識にもとづく試行錯誤のプロセスこそ、自己成長過程そのものなのである。
知識労働者は意思決定しなければならない。命令に従って行動すればよいというわけにはいかない。自らの貢献について責任を負わなければならない。
自らが責任を負うものについては、他の誰よりも適切に意思決定しなければならない。
『プロフェッショナルの条件』
知識労働者の本質は、意思決定である。理想の組織は、経営者・役員・管理職・平社員・アルバイト全員が、「貢献」を共通言語に仕事に責任をもち、成果を出すために意思決定できる組織である。命令で動くだけの駒になってはいけない。
人には驚くほど多様な能力がある。人はよろず屋である。
だが、その多様性を生産的に使うためには、それらの多様な能力を一つの仕事に集中することが不可欠である。
『プロフェッショナルの条件』
仕事において、もっとも集中すべきところはどこか。時間という資源は限られている。時間を有効に使うことが、成果をあげるプロフェッショナルの条件である。
企業は事業に優れているだけでは、その存在を正当化されない。社会の存在として優れていなければならない。
『マネジメント』
企業は儲かればいいんだーーという考えは、すべての誤りのもとである。社会に認められているのか?人に誇れる仕事をしているのか?そう問われたときに正々堂々と答えられるような企業でなければならない。
ほとんど常に、事業の目的とミッションを検討していないことが失敗と挫折の最大の原因である。
『マネジメント』
なんのために事業をやっているのか?事業の存在意義を明確にしなければ、方向性がブレたり、困難に直面したときにすぐに心が折れたりしてしまう。事業の目的とミッションを定めるということは、心に“芯”を通すことと同義である。
ミッションからスタートしなければならない。ミッションこそ重要である。組織として人として、何をもって憶えられたいか。
『非営利組織の経営』
社会の一部である「企業」は、世の中の問題を解消し、価値を創造することで、世の中に豊かさと幸福をもたらす組織である。突き詰めると、企業の存在理由は社会貢献である。ミッションとは社会貢献の内容である。ミッションなき企業は、ただ利潤を追求するだけの有害な組織となり、社会に迷惑をかけることになる。
事業の定義が明確に理解されないかぎり、いかなる企業といえども成り行きに左右されることとなる。
『マネジメント』
不明瞭な事業の定義は、経営者を盲目にする。目先の利益を優先して長期的な損失を被ったり、流行りの儲け話に飛びついて騙されたり……事業の定義をカッチリすれば、自分たちの“やるべきこと”、“やるべきではないこと”がクリアーになるはずだ。
組織は目的ではなく手段である。
『マネジメント』
組織はあくまでも社会貢献の手段であるーーと考えることが、事業の定義の第一歩である。
事業の定義は、集中を強いるものでなければならない。卓越性を獲得すべき知識を特定し、リーダーシップを獲得すべき市場を特定しなければならない。
『創造する経営者』
GE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチは、ドラッカーにコンサルを依頼した。そのときに生まれた戦略が、「世界で1位か2位になれない事業から撤退する」という“1位・2位戦略”だった。
あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。
『マネジメント』
事業の定義は、スタッフ全員とビジョンを共有し、視座を一致させる意味もある。
「われわれの事業は何か」を真剣に問うべきは、むしろ成功しているときである。
(中略)成功は常に、その成功をもたらした行動を陳腐化する。新しい現実をつくり出す。新しい問題をつくり出す。「そうして幸せに暮らしました」で終わるのは、お伽噺だけである。
『マネジメント』
世の中は絶えず変化している。消費者のニーズや価値実現欲求も日々刻々と変わる。したがって、顧客に貢献するべきコト・モノも、世の中の動きに合わせて更新していかなければならない。
企業の目的とミッションを定義するとき、そのような焦点となるものは一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。
『マネジメント』
あなたが貢献したい顧客は誰か?それを問い続けることで、目的とミッションの輪郭が見えてくるはずだ。
企業のほうは、顧客が自社の製品についていろいろ考えてくれるものと思っている。しかし、洗剤の品質について話し合っている主婦がどれだけいるか。気に入らなければ他のブランドに代えるだけのことである。
『マネジメント』
いいものをつくれば売れるーーと考えるだけでは不十分である。先立つものが、顧客に価値のあるものをつくることである。
メーカーが価値と考えるものが、顧客にとっては意味のない無駄であることが珍しくない。
『マネジメント』
まずは顧客が何を求めているのかを探求しなければならない。さもなければ、顧客のニーズからズレたものを提供することになる。
顧客が知りたいことは、製品なりサービスなりが、どれだけのことをしてくれるかだけである。
『マネジメント』
サービスや製品は、顧客の欲求を満たす手段であり機会である。企業は、自分たちの提供するサービスや製品が、顧客に対し“どれだけのことができるか”を考えなければならない。
顧客は製品を買っていない。欲求の充足を買っている。
『マネジメント』
半世紀以上前、当時のGM(ゼネラルモーターズ)は、「キャデラックを買う消費者はステータスを買っている」と考え、1929年の世界恐慌の苦境の中、キャデラック販売を成長事業へと転換することに成功した。
顧客にとっての価値はあまりに多様であって、顧客にしか答えられない。したがって、答えを推察してはならない。直に聞かなければならない。
『マネジメント』
商品の価値を知っているのは、企業ではない。実際に買っている顧客である。
マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。
『マネジメント』
現代のマーケティング論においても、上記のドラッカーの言葉がしばしば引用されている。仮に顧客を知り尽くすことができれば、販売活動をしなくても、勝手に売れていくはずである。ドラッカーはそう考えた。マーケティングが目指す究極は、まさにそこにある。
問題に挑戦するのではなく、容易に成功しそうなものを選ぶようでは、大きな成果はあげられない。
『プロフェッショナルの条件』
世の中に生じている様々な問題にこそ、イノベーションのチャンスがある。そもそもサービスや製品は、社会や顧客が直面する何らかの問題を解決する手段なのだから。
イノベーションとは、市場に追いつくために自分の製品やサービスを自分で変えていくことである。
『ネクストソサエティ』
テクノロジーの発明だけがイノベーションではない。極寒の地に住むイヌイット族に「食材の温度を適切に保つ装置です」とうたって冷蔵庫を売ることも、立派なイノベーションである。顧客の数だけ、顧客が求める価値がある。そこにリーチするように売り方を変えるだけで、イノベーションを起こすことができる。
イノベーションが顧客にいかなる価値をもたらすかを判断できるのは、顧客だけである。
『マネジメント』
新しい技術をウリにした商品が鳴かず飛ばずで撃沈してしまう実例は枚挙にいとまがない。その新しい技術が、現実の顧客が求める価値を本当に満たすのかについて、考え切れていなかったせいかもしれない。
生産的なイノベーションとは、単なる改良ではない。それは新しい欲求の満足をもたらす財やサービスの創造である。
『マネジメント』
満たされていない顧客の価値は何か?市場を調査するときに意識してみよう。
本物の変化とは人が行うものであり、一時の変化は人が言うことである。話にばかり出てくるものは一時のものである。
『ネクストソサエティ』
何を信じずるべきか?情報で氾濫した時代に、自分を見失わないようにしなければならない。
誰もが変化に出会うと脅威かチャンスかを考える。脅威と見てしまうと、もうイノベーションは無理だ。
何ごとであれ目論見と違うからといって軽視したり無視したりしてはならない。予期せぬことこそ最高のイノベーションのチャンスである。
『ネクストソサエティ』
世の中の変化が、事業の逆風となることもあるだろう。しかしその変化をどう捉えるかによって、その後の運命は大きく変わってくるのではないだろうか。
多くの起業家が、市場よりも自分を信じたために消えていっている。
『ネクストソサエティ』
昨日の成功は、すでに過去の出来事である。経営者は、過去ではなく、明日の価値を創造しなくてはならない。明日への第一歩は、現実の市場や顧客の声である。事業を継続する生命線は、そこにしかない。
起業家というものは自分が主人公だと思っている。ここから第二のわなが生まれる。彼らは利益が第一だと考える。利益は第二である。キャッシュフローが第一である。
『ネクストソサエティ』
誰もが入ってくるカネにしか目がいかない。しかし、事業を維持するには、カネの出入りの健全性を保つ必要がある。
市場動向のうち最も重要なものが、人口構造の変化である。だが、これに注意を払っている企業はほとんどない。
(中略)人口構造は、購買力、購買特性、労働力に影響を与えるというだけの理由で重要なのではない。人口構造だけが、未来に関して唯一の予測可能な事象だからである。
『マネジメント』
人口は社会構造の根幹を支える要素である。人口の変化に目を凝らせば、自分の事業の未来に補助線を引くことができるようになるだろう。
カリスマ性はリーダーを破滅させる。柔軟性を奪い、不滅性を盲信させ、変化不能とする。
『プロフェッショナルの条件』
カリスマ経営者の組織は短命になりやすい。なぜなら変化に弱いからだ。
重要なのはカリスマ性ではない。ミッションである。
したがってリーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。
『非営利組織の経営』
リーダーに必要なのは、事業の存在意義、すなわち組織のミッションを定義し、共有することである。仮にリーダーがいなくなっても、ミッションは残り続ける。しかしカリスマは属人的であるがゆえに、たった一代で組織が崩壊する。
リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、それを維持する者である。もちろん、妥協することもある。
(中略)リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく、望ましいかを考え抜く。リーダーの仕事は、明確な音を出すトランペットになることである。
『プロフェッショナルの条件』
ミッションを基準にすれば、意思決定の質も高くなる。ときには妥協も必要になることもあるが、そんなときでも、ミッションに沿った正しい妥協を行うことができる。それがリーダーに求められる意思決定である。
優れたリーダーは、強力な部下を求める。部下を激励し、前進させ、誇りとする。部下の失敗に最終的な責任をもつがゆえに、部下の成功を脅威とせず、むしろ自らの成功と捉える
『プロフェッショナルの条件』
似非(えせ)リーダーは、自己保身にしか関心がないため、自分の地位を脅かす存在を恐れる。
真に厳しい上司とは、つまるところ、それぞれの道で一流の人間をつくる人である。彼らは、部下がよくできるはずのことから考え、次に、その部下が本当にそれを行うことを要求する。
『プロフェッショナルの条件』
人は弱みと強みをあわせ持つ存在である。弱みに目を向けていては、部下に成果をあげさせることはできない。部下の強みを知り、生かし、一流の知識労働者にすることが、上司の責任である。
リーダーシップの素地として、行動と責任についての厳格な原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認するという組織の文化に優るものはない。
『現代の経営』
誰でもリーダーになれる。なぜなら、リーダーとはカリスマでも才能でも能力でもなく、ミッションをもとに 目標を定め、優先順位を決め、それを維持するという仕事だからである。リーダーシップを醸成する組織文化のカギは、「敬意」である。
信頼するということは、必ずしもリーダーを好きになることではない。常に同意できるということでもない。リーダーの言うことが真意であると確信をもてることである。
『プロフェッショナルの条件』
“仲がいい”ことが絶対の条件ではない。「成果」という共通言語が、仕事における独自の信頼関係を育む。人の考えや好みは多様である。ゆえに、誰にでも好かれるリーダーは存在しない。だがそれでもいいのである。ミッションを実現し、成果を出すために、リーダーの言っていることが真に正しいのかどうかが重要である。
もし素晴らしい仕事が、人の協力を必要とした段階でつねに失敗するようであれば、一つの原因として、人への対し方、すなわち礼儀に欠けるところがあるのかもしれない。
『明日を支配するもの』
人としてどうか、という点もないがしろにしてはならない。他者への敬意が欠けている者が、人を動かすことができないのは自明である。
経営陣が大金を懐に入れつつ大量のレイオフを行うことは、社会的にも道義的にも許されない。そのような行為が一般社員にもたらす憤りとしらけは、必ず高いつけとなって返ってくる。
『ネクストソサエティ』
経営陣とスタッフの分断は、世の中の分断を招き、不毛な対立を生み出す。そして企業への不信感は、働く人たちの希望や情熱を奪い、社会全体の生産性を低下させる。
組織には価値観がある。そこに働く者にも価値観がある。
組織において成果をあげるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじまなければならない。
同一である必要はない。だが、共存できなければならない。
さもなければ、心楽しまず、成果もあがらない。
『プロフェッショナルの条件』
組織のミッションにスタッフが共感を示してくれるか?企業理念に“染まる”必要はない。だが、スタッフ一人ひとりの価値観になじむかどうかは重要である。
時間は最も消えやすい資源である。
『マネジメント』
多くの人が、時間という限られた資源を軽んじている。時間ほど平等で有限な資源はない。時間をいかに生産的に使うかが、成果のカギである。
自らの時間の半分以上をコントロールし自由に使っているなどという者は、実際に自分がどのように時間を使っているかを知らないだけである。
『経営者の条件』
まずは時間を記録して客観的に見つめなおしてみよう。たいていの場合、“しなくていい仕事”や“誰かにまかせるべき仕事”のために、多くの時間を費やしていることが判明する。
「何もしないと何が起こるか」という問いに対して、「何も起こらない」が答えであるならば、手をつけてはならない。
『プロフェッショナルの条件』
組織や仕事の仕組みを改善する際に、どこから着手すべきか迷ったときは、この言葉を思い出してほしい。
30%の市場シェアであれば巨人である。しかし、それでも70%は自社のものを買ってくれていない。
われわれはその70%について何も知らない。彼らノンカスタマー(非顧客)こそ、来るべき変化を知らせてくれる貴重な情報源である。
『ネクストソサエティ』
乗客の減少に悩んでいた十勝バスは、「なぜバスに乗らないのですか?」とノンカスタマー(非顧客)にたずねて回り、その声を改善策に反映して収益アップを果たした。
トップマネジメントたる者は、多くの時間を社外で過ごさなければならない。ノンカスタマーを知ることは至難である。だが、それだけが知識の幅を広げる唯一の道である。
『ネクストソサエティ』
外の世界に目を向け、世の中の動きや、人々のライフスタイル、価値観を探求しよう。
あらゆる国で政治家のリーダーシップを求める声が聞かれる。だが、それはまちがった声だ。
あらゆるところで問題が起こっているのは、人に問題があるからではない。システムに問題があるからである。いまや国民国家の政府そのものにイノベーションが必要とされている。
『ネクストソサエティ』
マネジメントもイノベーションも、あらゆる組織に必要である。それは企業や非営利団体に限らず、国そのものにも適用できる。制度が社会の変化に対応できなければ、様々な歪を生み出すことになるだろう。
まとめ
ドラッカーは、Googleをはじめとする一流企業の経営者たちに学ばれるほど影響力のあった人物だ。今回の記事を読んでくれたあなたにはぜひ、ドラッカーの思考を仕事に活用して、経営者としてさらにスキルアップしてほしいと願っている。
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2003年3月から始まって、これまでに全国で20箇所、計1000回以上開催しており、多くの方にビジネスの場での成果を実感していただいています。
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