本記事は、初めてドラッカーの『マネジメント』を読んだライター石山が、1章ごとに内容をまとめながら、気づきや発見を共有する企画シリーズです。
『マネジメント』の内容を解説したサイトはさまざまですが、実際のドラッカーの文章を引用しながらまとめているのは、本記事ならではの試みです!
「ドラッカーが実際にどんなことを書いているのか、本物の文章を読んでみたい」
「他サイトはコンパクトにまとめられ過ぎていて、“なぜ”そうなったのかよくわからない」
「聞きかじった内容をまとめているだけのサイトが多い気がする……」
「もっと真面目に『マネジメント』を勉強したいけど、自分で読み解く自信がない」
このような方は、ぜひ本記事を読んでみてください。大学のゼミのレジュメを読むつもりで、一緒に学んでいきましょう♪
——-前半のもくじ———-
●(1)マネジメントの役割は3つある
●①【目的とミッション】まず企業は「利益」を上げよ!
●②【生産的な仕事と成果をあげる人】「人」という唯一無二の資源を活かす!
●③【社会に与えるインパクトの処理と社会的な貢献】事業がうまくいくだけはダメ!?その理由とは
●まとめ:“企業は社会に貢献する存在”であるという考え方がマネジメントの核心
——-後半のもくじ———-
●(2)企業が永続するためには「時間」の要素が不可欠!
●(3)管理のマネジメント!コストの最適化と成果の最適化
●(4)イノベーションのマネジメント!“明日”を創造する企業が生き残りの秘訣?
●まとめ:生き残る企業になるためのヒントが『マネジメント』にある!
目次
(1)マネジメントの役割は3つある
いよいよⅠ部4章から、マネジメントの本質に迫っていきます。
まずはその前に、ドラッカーの“組織観”について復習しておきましょう。
「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織それ自体のためではない。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく手段である。したがって問題は、その組織は何かではない。その組織は何をすべきか、あげるべき成果は何かである」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 42)
前回の章でもいっていたように、現代組織は社会の中心を担っています。お金・商品・サービスなどの生活に欠かせないものを供給しているのは、紛れもなく企業という名の組織ですよね。
ドラッカーは、マネジメントについて論じるときはいつも、“組織が社会の一部であり、組織の行うことはすべて社会に影響を与える”という前提に立っています。だから彼は、最終的に組織のゴールを「社会貢献」という成果と考えているのです。
「マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある。それら三つの役割は、異質であるが同じように重要である。
①自らの組織に特有の目的とミッションを果たす。
②仕事を生産的なものとし、働く人たちに成果をあげさせる。
➂自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的な貢献を行う。」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 42-3)
さて以下では、これら三つのマネジメントの役割についてみていきましょう!
★ポイント★
・組織(企業)は社会の一部である。
・したがって組織(企業)の行うことは社会に影響を与える。
・組織(企業)のゴールは社会貢献である。
・社会貢献するためのマネジメントには3つの役割がある。
①【目的とミッション】まず企業は「利益」を上げよ!
組織の構造や仕組みは、組織によって異なりますし、存在意義や果たすべきミッションも違います。それでは、企業という組織には、どのような目的とミッションがあるのでしょうか。
「企業において、それは経済的な成果をあげることである」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 43)
「企業だけが特別の機能として経済的な成果をあげなければならない。企業は経済的な成果のために存在する……(中略)……企業においては、経済的な成果が存在の根拠であり、目的である」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 43)
「企業のマネジメントたる者は、あらゆる意思決定とあらゆる行動において、経済的な成果を第一に考えなければならない。……(中略)……経済的な成果を生むことができなければ失敗である。顧客が欲する財とサービスを顧客がすすんで支払う価格で供給できなければ失敗である。自らに託された資産の生産力を、向上ないしは少なくとも維持できなければならない。……(中略)……企業のマネジメントたる者は利益に責任を負うべきことを意味する」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 44)
こうみると、ドラッカーが企業が利益という成果に非常に重要視していることがわかりますね。
なんだか、「利益こそすべて!」「利益を出さなければ企業の意味がない!」とお金に固執しているようにも思えますが、そうではありません。
ドラッカーが企業の経済的成功にこだわるのは、利益を出すことが社会貢献という成果に深く関わっているからなのです。
「……経済的な成果がすべてではないとはいえ、教育、医療、国防、知識の発達などあらゆる社会的な成果が、経済的な成果がもたらす余剰に依存しているからである。非経済的な成果を望むほど、企業がもたらす経済的な成果に依存する度合いは高まる」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 43-4)
本書『マネジメント』のメインテーマはあくまでも企業であるとドラッカーはいいますが、上記の引用をみると、その理由がよくわかりますね。
以前の章でも論じていたように、企業という組織は、社会の構造や人々の生活様式に多大な影響を与えています。企業が利益をあげることができるからこそ、社会は豊かになっていくわけですね。
★ポイント★
・企業の成功が社会そのものの発展に関わっている
・企業の目的/存在意義⇒経済的な成果を上げること
・「本業において成果をあげることが重要なのは、組織が社会的な機関だからである」(p.48)
②【生産的な仕事と成果をあげる人】「人」という唯一無二の資源を活かす!
第二のマネジメントの役割には、「仕事を生産的なものとし、人に成果をあげさせる」ことだとドラッカーはいいます。
多くの人は、ついつい、「仕事を生産的なものにする」部分を強調してしまうかもしれません。しかしドラッカーは、あくまでも「人」の成果こそ重要だと考えます。
なぜなら、人々にとって企業という組織が、自己実現のための大切な場だからです。つまりドラッカーからすれば、働く人が成果をあげることと、自己実現の機会を得ることは同義なのでしょう。
「企業にも企業以外の組織にも、本当の資源は一つしかない。人である。組織が成果をあげるのは、人を生産的たらしめることによってである。それは仕事を通じて行われる」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 45)
何のために仕事を生産的にするのか?――この問いの向こう側には、いつも「人」がいる。それがドラッカーの思考に深みをもたせているのかもしれません。
だからこそドラッカーは、仕事それ自体を効率化するよりも、「仕事を人に合わせる」ことのほうがずっと難しいといいます。ワークフローそれ自体を最適化することは、多少の知識と経験があれば誰でもできるかもしれません。しかし、そのワークフローが実際に働く人たちにとって最適であるとは限らないのです。
「仕事と人のマネジメントに失敗したのでは、いかなる成果といえども、幻影というべきであって無意味である。そのようなことでは、競争力を失うほどにコストは上昇する。階層間の対立は深まり、事業の継続は不可能となる」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 48)
では、どうすれば人に成果をあげさせることができるのでしょうか。
「人に成果をあげさせるには、一人ひとりの人を、それぞれに生理的、心理的な特質、能力、限界をもち、独特の行動様式をもつ生きた存在としてとらえなければならない。すなわち、人を人として、それぞれに個性、市民性、仕事の仕方、仕事の量と質に違いのある存在、したがって、それぞれがそれぞれに責任、動機づけ、参画、満足、誘因、報奨、リーダーシップ、位置づけ、役割を必要とする存在として理解しなければならない」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 45)
くだけた言い方をすると、人はみんな考え方や性格が違うから、それを認めたうえで仕事を割り振ったり、モチベーションをあげるためのアプローチを考えたりしなければならないということですね。
それが、ドラッカーのいう「仕事を人に合わせる」という言葉の真意なのかもしれません。
★ポイント★
・組織の唯一の資源は「人」。
・「人」に成果をあげさせるには、「仕事を人に合わせる」ことが大事。
・「仕事を人に合わせる」には、一人ひとりの違いを認めて仕事や役割を配分しなければならない。
・「仕事を生産的なものにし、働く人たちに成果をあげさせることが重要なのは、組織が社会としての信条と価値観を実現することを社会が求めているからである」(p. 48)
③【社会に与えるインパクトの処理と社会的な貢献】事業がうまくいくだけはダメ!?その理由とは
ドラッカーはキッパリと、企業が経済的に成功しているだけでは、社会的に存在する理由を正当化することはできないといいます。つまり、「自分の会社は儲けているのだから、社会にとって必要な存在なのだ」と考えてはいけないということです。
なぜならドラッカーは――繰り返しになってしまいますが――企業という組織が社会に影響(インパクト)を与える存在だと考えているからです。
「企業は、働く者に仕事を与え、株主に配当を与えるために存在するのではない。消費者に対し財とサービスを供給するために存在する。病院は、医師や看護師のために存在するのではない。早く退院して、再び入院することのないことを願う患者のために存在する。学校は、先生のためではなく生徒のために存在する。これらのことを忘れたマネジメントはマネジメントではない」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/pp. 46)
企業も含めて、あらゆる現代の組織は、「外の世界に貢献するために存在する」とドラッカーはいいます。
そうである以上は、自らの利益も出しつつ、社会に与えている影響をかんがみて、何らかの形で責任を果たさなければなりません。それが、マネジメントにおける3つ目の役割の意味なのです。
★ポイント★
・企業を含めてあらゆる現代組織は外の世界に貢献するために存在する。
・企業が本業で利益をあげているだけでは、社会的に必要な存在であることを正当化できない。
・企業は経済活動によって社会に与える影響(インパクト)に対して責任を果たす義務がある。
・「社会に与えるインパクトを処理し、社会の問題について社会的責任を果たすことは、社会が滅びたのちなお存続しうる組織などありえないからである」(p. 48)
まとめ:“企業は社会に貢献する存在”であるという考え方がマネジメントの核心
今回は、Ⅰ部:第4章の「マネジメントの役割」の内容を要約しました。
「まずは利益をあげること」「一人ひとりに個性があることを認めて仕事や役割を与えること」「社会的責任を果たすこと」の3つが企業にとって重要なのだとドラッカーはいいます。
この考え方は、いうなればマネジメントの核心。この3つの原則と意味をしっかりと抑えておけば、今後も『マネジメント』を読み進めるうえで非常に助けになるのではないかと思いました。
次回は、ここではまとめきれなかったⅠ部:第4章の後半に続きます!ぜひ前半と合わせて読んでいただけたら幸いです♪
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