本記事は、初めてドラッカーの『マネジメント』を読んだライター石山が、1章ごとに内容をまとめながら、気づきや発見を共有する企画シリーズです。
『マネジメント』の内容を解説したサイトはさまざまですが、実際のドラッカーの文章を引用しながらまとめているのは、本記事ならではの試みです!
「ドラッカーが実際にどんなことを書いているのか、本物の文章を読んでみたい」
「他サイトはコンパクトにまとめられ過ぎていて、“なぜ”そうなったのかよくわからない」
「聞きかじった内容をまとめているだけのサイトが多い気がする……」
「もっと真面目に『マネジメント』を勉強したいけど、自分で読み解く自信がない」
このような方は、ぜひ本記事を読んでみてください。大学のゼミのレジュメを読むつもりで、一緒に学んでいきましょう♪
目次
(1)人は「資源」であり「機会」!人事からリーダーシップへ
組織にとって「人」とは何か?その問いをあえて投げかけることで、見えてくるものがあります。
もしも人を「ルールから逸脱しないように監視するべき対象」「放っておくとサボる存在」といったように捉えてしまうと、まるで看守と囚人のように、上司と部下の関係は冷たいコンクリートの壁で仕切られてしまうことでしょう。
「人を問題や費用や脅威として見るのではなく、資源として、機会として見ることを学ばなければならない。管理ではなくリードすること、支配ではなく方向づけることを学ばなければならない」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 30)
「つまるところ、発展とは資力ではなく人間力の問題である。その人間力の醸成と方向づけこそマネジメントの役割である。マネジメントが原動力であって、発展はその成果である」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 40)
ドラッカーは、「管理する側」と「管理される側」といった窮屈な捉え方をあらため、より創造的な関係性を目指していくことを強調します。
なぜなら今日の社会の中心は組織であり、それゆえに組織は「人」の幸福を実現するという責務があるからです。つまり組織のリーダーは、そこで働いている「人」の暮らしをも視野に入れてマネジメントしなければならないのです。
「今日最大のコミュニティは組織である。家族はコミュニティというよりは、さらに私的なものである。いまやコミュニティは組織に見出される。したがって、個人の価値と願望を組織のエネルギーと成果に転換させることこそ、マネジメントの仕事である。不満がないという意味での満足では十分でない」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 39)
誰しもが「働きやすい職場づくり」を目指すと思います。しかしドラッカーにいわせれば、それではまだマネジメントが足りていないということになるのかもしれません……。
「不満がないという意味での満足では十分でない」のであれば、組織のリーダーが追求するべきは、「不満がないプラスα」の職場づくりがドラッカー的には正解なのかも?
★ポイント★
・人とは「資源」であり「機会」
・管理ではなくリード、支配ではなく方向付けを行うべき
・人間力の向上が組織の発展をもたらす
(2)社会問題は起業のチャンス!?
ドラッカーは、現代企業は「既存の事業のためのマネジメント」と「イノベーションのためのマネジメント」が必要だと説きます。
技術の発展、社会構造の改革、生活様式の変化……こうした世の中の大きな変化をイノベーションと呼びますが、それでは企業のイノベーションのチャンスはどんなところにあるのでしょうか。
「……途上国の発展、地球環境問題への取り組み、教育と医療の生産性の向上など、今日われわれが直面する問題こそ、今日の企業とそのマネジメントにとって、社会的イノベーションのための最大の機会である。まさに企業家にとっての機会であり、その知識、スキル、仕事ぶりに対する挑戦であり、要求である」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 33)
近年では、持続可能な社会を実現するための「環境ビジネス」が注目されています。
エコバッグ、電気自動車、紙のストローなど……消費型ビジネスを脱却したさまざまな循環型ビジネスモデルが提案され、徐々に社会に浸透してきているようですが、実はここにこそ、ドラッカーのいう「社会的イノベーションの最大の機会」があるといえるのではないでしょうか。
ビジネスの“起点”は人によって異なりますが、成功している経営者の多くには、ある共通点があるように思えます。それは、社会に対して何らかの“問題意識”があり、その問題を解決したいという欲求が原動力となって創業をしているということです。
ドラッカー流に考えると、会社のイノベーションとは、すなわち社会のイノベーション。
つまり起業をするときは「儲けたいから会社をつくる」というのではなく、「社会を良くしたい(イノベーションしたい)からその手段として会社をつくる」と発想を転換すれば、これまで見えてこなかったビジネスのビジョンが浮かび上がってくるかもしれません。
★ポイント★
・イノベーションのチャンスは社会問題にあり
(3)マネジメントは企業以外の組織でも通用する!
ドラッカーの「マネジメント」と聞くと、どうしても会社経営の世界の話のように思えてきますよね。しかしそうではありません。ドラッカーは、「成果」を出すという目的さえあれば、非営利の組織であってもマネジメントが通用すると述べます。
実際、『もしドラ』は野球部という組織が主役でしたよね。「甲子園に出場する」という成果があるからこそ、マネジメントの実践が通用したわけです。
大切なのは、その組織に合った方法でマネジメントを行うこと。本書の序論:第1章でドラッカー自身が言っていたように、マネジメントとはあくまでも“文化”なのです。組織の雰囲気や共有している価値観によって、マネジメントの在り方もそれぞれに異なります。
「企業のマネジメントと病院のような公的サービス機関のマネジメントは大違いとされていた。事実、それぞれのミッションは大きく異なる。公的サービス機関を企業のようにマネジメントしても成功するわけではない。しかし、銀行、鉄鋼メーカー、デパートで必要とされるマネジメントも互いに異なる」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 34)
この記述はまさに、序論:第2章でも論じていた“マネジメントは万能薬・魔法の杖ではない”というドラッカーの戒めですね。マネジメントを実践する者はみな、常に時代の変化や社会構造に対応しながらアプローチを変えていかなければならないのです。
しかし一方で、マネジメントの原理原則は、どんな組織にも通用するのだとドラッカーはいいます。
「ところが実は、公的サービス機関のマネジメントがなすべきことの基本は、企業のマネジメントがなすべきことの基本と何ら変わらない。本業で成果をあげることであり、生産的な仕事によって働く人たちが成果をあげるようにすることであり、自らの事業によるインパクトを処理しつつ、社会的な貢献を行うことである。これらこそマネジメントの役割である」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 34)
結局のところ、成果を出すためにするべき仕事こそ、マネジメントの本質なのでしょう。ですからマネジメントは、「成果」を追求するすべての人に開かれている実践体系といえます。
★ポイント★
・マネジメントは非営利組織にも通用する(本質は同じ)
・ただしアプローチの仕方は組織によって異なるので注意。A企業で成功したマネジメントがB企業に通用するとは限らない
(4)グローバル企業に求められるマネジメントとは?
世界で活躍できる企業になるためには、どうすればよいのでしょうか?そのためのヒントを、すでにドラッカーが示しています。
「マネジメントは、個人、コミュニティ、社会の価値、願望、伝統を生産的なものとしなければならない。そもそもマネジメントが、それぞれの国に特有の文化を活かすことに成功しなければ、世界の発展は望みえない」
(『マネジメント 課題、責任、実践(上)』ドラッカー名著集 13/P.F.ドラッカー/訳:上田 惇生/p. 38)
近年では、生き方の多様性を強調すると同時に、グローバルスタンダードな価値基準(ジェンダー問題や人種差別問題など)を共有する必要に迫られています。
そんな世の中の動きのなかで、どうやって世界に通用する企業へと成長していくのか――その問いにぶつかったときは、そもそもマネジメントとは何なのかという問いを投げかけてみると、新しい発見があるかもしれません。
★ポイント★
・それぞれの国に特有の文化を活かすことが、世界に通用する企業になるための秘訣
まとめ:「マネジメント」というレンズから世界を眺めてみる
今回の『マネジメント』序論:第3章は、人事のマネジメント、企業(イノベーション)のマネジメント、企業以外のマネジメント、グローバル企業のマネジメントといったように、多角的にマネジメントの可能性を論じる内容となっています。
コンパクトにまとめられていますが、それぞれの領域でどのようにマネジメントを行っていくべきか、そのヒントがたっぷり詰まっているのではないでしょうか。
次回からは、いよいよ本題の「Ⅰ部 マネジメントの役割」が始まります!楽しみですね♪
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