■第5章の位置づけ
『現代の経営』(1954年)は、第1章から第3章までの総論を受けて、五つの各論(Part)に入ります。五つのパートには、マネジメントの三つの機能が含まれています。
Part Ⅰ(第4章~第9章)は、マネジメントの第一の機能、「事業のマネジメント」です。第5章は、第4章「シアーズ物語」という現実の物語を理論化していく最初の章です。
第5章は、Part Ⅰ全体の総論として位置づけられます。事業、マーケティング、イノベーション、生産性、利益という重要概念の整理を行います。Part Ⅰの以下の章はこれらの概念を詳述、あるいは具体化したものということができます。
特に第5章で事業そのものの理解を深め、第6章「われわれの事業は何か」で自社に置き換えるという手順をとったこと、第5章で目標の重要性に触れて、第7章「事業の目標」を配置したことなど第5章がリード役を担っていることに留意してください。
■第5章のドラッカーのことば
『現代の経営』第5章「事業とは何か」には、ドラッカー教授の最も有名な言葉があります。「ドラッカーって誰?」ともし聞かれたら今日の一言を是非お伝え下さい。経営者としての格が2段くらい上がること請け合いです。ではその黄金の一言です!
<ドラッカーのことば>
事業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち、顧客の創造である。
(p.46)
事業の目的はと問われ・・「利益をあげること」というのでは合格点は望めません。ましてや「時価総額をあげること」などもってのほか・・。ドラッカー教授は「利益」をあげることを条件であるといいます。考えてみれば当たり前で、利益の源泉は顧客にあり、顧客がいなければ企業の存続も望むべくもありません。今日「仕事」があり、明日も「仕事」があるという意味には、二つの大切なことが隠されています。
第一に、明日も「仕事」を続けていけるという意味で組織が存続していけるということ。つまり利益をあげこの先も「仕事」ができるという意味です。
第二に、明日も「仕事」があるということは、お客様の支持を得ているということ。つまり明日も「仕事」が与えられているということは、世の中に役割を持っている証です。世の中の役割がなくなった組織は、退場するのみ。二つの意味、前者は事業存続の条件、後者を事業の目的ということができます。顧客を維持し、創造し続けているということは、私たちに成長の場が与え続けられているということです。事業をしている(に参加している)ということは、ただただそういうことだと思います。顧客の支持が上がることは、すなわち社会の役割が増すことに他なりません。社会の役割が増すことで、ますます組織に参加している個の成長の機会が増えたと喜べる組織づくりをしたいものです。
■第5章の実践ポイント
①事業の目的を理解して行動する
②利益の機能を理解して行動する
③事業の目的を実現するために必要な機能としてマーケティングとイノベーション
が必要なことを理解して行動する
④事業の管理的な機能として生産性の意味を理解して行動する
⑤サービス労働と知識労働の生産性を向上させる
⑥知識労働の生産性と知識労働者の生産性を区別して考える
⑦事業のマネジメントの定義を理解して行動する
⑧事業のマネジメントの本質を理解して行動する
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