事業というプロセスから経済価値が生まれる。この原理はすべての事業に共通しています。この経済価値は顧客価値と言い換えることができます。
ドラッカー教授は「顧客にとっての価値は何か」という問いを用います。マネジメントを行う上で最も重要な5つの問いの第3番目に位置するものです。
ちなみに第1の問いは「われわれのミッションは何か」。組織の目的を問うものです(第3回に掲載)。組織の目的を実現する手段として事業があるという位置づけ再確認しなければなりません。
上記の第3番目の問いは、第2番目の問い「われわれの顧客は誰か」に連なるものです。第2、第3の問いは「われわれの事業の顧客は誰か」「その顧客にとっての価値は何か」と問うのが有効です。
ここでいう「価値」は顧客価値です。顧客がその事業を支持する理由を問うのが「顧客にとっての価値は何か」です。
顧客にとっての価値を数字で表したものが付加価値
ここで顧客が支持する理由について少し考えてみたいと思います。たとえばトヨタとホンダでは販売台数も利益体質などすべて異なります。それぞれにファンや多くの支持者がいます。この差はどこから来るのでしょうか。
すべての自動車メーカーが鉄板やガラス・樹脂ガラス・樹脂を購入し、ライトやタイヤを調達しますが素材や部品の品質などに決定的な優劣はないはずです。しかし、デザインの訴求力や製造現場の改善力、アフターサービスの充実などさまざまな要素によって、顧客に選ばれるかどうかが決まり、業績に差が出ているという現実があります。
表面的には製品やサービスで差別化が行われているように見えますが、本質的な差別化要因はその 製品やサービスを生み出す仕組みにあります。 仕組みという事業プロセスに埋め込まれた知識が豊かであればあるほど真似されにくい( 模倣困難性)のです。
業績の差は顧客支持の差であり、その源泉は②「知識という資源」と①「事業というプロセス」の優劣にかかっています。外から購入するものではなく自社の知恵と汗の結晶が事業に独自性を与えています。このようにして生まれた経済価値を付加価値といいます。
付加価値という概念は、マネジメント会計上もっとも重要な情報だといえるでしょう。なぜならそれは③「事業が生み出す経済価値」そのものを表しているからです。組織の目標を実現する手段としての事業の価値、これほど重要な情報は他にありません。
(づづく)
上記①~③は、下記<前回の復習>と符合。
<前回の復習>
事業の定義の3つの要素。
①事業はプロセスである
②そのプロセスに知識という資源と投入する
③そのプロセスから経済価値が生まれる
「会計事務所では教えない?経営者のためのマネジメント会計入門」連載記事




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