経営者がマネジメントする際に真に必要な意思決定とは何か。これを考えるにはマネジメントの役割から考えなければなりません。「マネジメントの役割とは何か」。
答えられそうで意外に答えられない問いです。
マネジメントの父と呼ばれるドラッカー教授がマネジメントの役割を3つ明示しています。
①自らの組織に特有の目的とミッションを果たす
②仕事を生産的なものとし、働く人たちに成果をあげさせる
③自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的な貢献を行う
マネジメント会計の目的は、マネジメントが上記3つの役割を果たすためにあると考えなければならないと考えます。いかがでしょうか。
つまり3つの役割を果たす意思決定に必要な情報を提供することがマネジメント会計の究極目的となるということです。
前回も記載した、投資の意思決定(回収の経済計算)/追加受注の意思決定/価格設定の意思決定/撤退の意思決定/アウトソーシングの意思決定などは全体のほんの一部を示しているにすぎないのです。
言葉を換えると管理会計は「できること」を手法として示しているにすぎず、「なすべきこと」を手法として挙げているとはいえないのです。
組織は道具である
組織は特有の目的やミッションを果たすことを存在意義としています。ミッションを果たさなくなった組織は「ガラクタ」になります。「ガラクタ」と表現したのは、ドラッカー教授が組織を社会的な道具であると位置づけているからです。
組織は道具ですから、目的があることは当然です。動かなくなった車がガラクタになるのと同じです。マネジメント会計は道具としての組織が真に目的を果たすために必要な情報を提供することを目的にしなければなりません。
このことは会計も組織という大道具を上手く使うための小道具であることを意味しています。したがって会計もまた目的を間違って使えば「ガラクタ」になる可能性を宿しているということです。
では組織の経営に一番必要な情報とは何でしょうか。次回のテーマとさせていただきます。
(つづく)
「会計事務所では教えない?経営者のためのマネジメント会計入門」連載記事
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