目次
新年、あけましておめでとうございます
編集長兼ライターの佐藤等です。
今年は平成から新元号へ代わる年、時代も一つの節目を迎えます。
2019年の新年にあたって私たちの現在地を確認するために記憶の断片を記しておきます。
ドラッカー教授が命名した社会生態学は、継続するものと非連続なものや断絶するものを見分ける方法論です。目的は未来を予見し、正しい行動をとることです。
しばし、お付き合いください。
明治から151年、その約半分が戦後(74年)、そのまた約半分が平成の30年間。
世界は、この150年で農業社会から工業社会に生まれ変わりました。
世界は戦後、組織社会へと変貌を遂げました。
平成の30年間は、私の職業人生とほとんど重なっています。
私が職業会計人として社会に出たのは26歳(昭和62年-1987年)の秋。
今から振り返れば、バブルの最終局面でした。
幕開けはバブル崩壊から
「土地神話」(土地は値下がりしない)という恐ろしい常識が蔓延し、企業も個人も土地や株やゴルフ会員権、絵画などに投資していました。
企業の監査をしていた新人時代、私は株券の実査(現物を確認する作業)をしながら含み益の計算をよくさせられていました。企業が本業以外で収入をあげる「財テク」(財務テクノロジー)という言葉が盛んに使われていました。
1987年2月年に1株120万円で上場したNTT株は3月には300万円を突破。安田海上火災(現、損保ジャパン)は、ゴッホの『ひまわり』を53億円で落札しました。こうして法人も個人も借金をして次々に投資を行いました。
祭りには必ず終わりがあります。
1989年の大納会(平成元年12月29日)に、株価はピークを迎え日経平均38,915円87銭をつけました。翌年、政府と日銀は、過熱した投資ブームに対応するため「不動産融資総量規制」(土地を買う目的の融資額を減らす」という政策)と公定歩合引き上げ(公定歩合が2.5%→6%台)という金融政策を打ち出します。
こうした政策により日経平均は1990年9月末には、ピークの半値の20,000円近くまで下がりました。
1991年(平成3年)には、所有している土地に課税するという「地価税」が施行され、土地神話は完全に崩壊しました。土地は、1993年に最大の下落率となり、これも半値以下となりました。以降、2005年まで14年間連続で下がり続けました。
その間の1997年、私が住む北海道にあった唯一の都市銀行である北海拓殖銀行が破綻しました。この年、山一証券も廃業を余儀なくされ先の見えないトンネルに入り込んだような閉塞感の中にいました。
私たちは、後に「失われた20年」と呼ばれる時代に入りこんでいたのです。
実にその期間は、平成の3分の2に当ります。
私たちは何を失ったのでしょうか。
情報化時代へのシフト
この閉塞感の中、時代は情報化へとシフトしていきました。
今から約24年前の1995年、Windows95の登場によりインターネット時代に入りました。1994年に創業したamazonは流通構造を激変させました。また、約12年前の2007年、iPhoneの出現は生活スタイルを激変させました。今や日本ではスマートフォンの台数は、パソコンを超えました。今や手のひらで銀行取引や株取引が完結する世の中に変わったのです。
私たちの世界は20年をかけてデジタルエコノミーに塗り替えられたのです。
私たちは何を得たのでしょうか。
金融資本主義の終焉?
10年前の2008年9月、世界を激震が襲います。
リーマンショックです。
米国の証券会社4位のリーマン・ブラザーズが経営破綻しました。
アメリカの住宅バブル(2001~2006年)が2007年にはじけ、住宅価格が下落に転じると低所得者向け高利住宅ローン(サブプライムローン)が不良債権化しました。このローンは証券化され、他の金融商品と組み合わされて世界中に販売されていたため信用不安は広範囲に広がりました。リーマンショックは終盤に起こりました。祭りには終わりがあるのです。
9月12日に12,214円だった日経平均は10月28日に6,994円まで下落。世界では資本主義の終焉が意識され始めました。
あれから10年、私たちは何を失ったのでしょうか。
AIは人類に何をもたらすのか
1997年、IBM社のディープブルーが、当時のチェスの世界チャンピョンに勝利しました。
2013年、将棋の現役プロ棋士がコンピュータに負けました。2017年の電王戦をもってプロ棋士vsコンピュータ対決は、コンピュータの優位が確定し、対戦は終止符を打ちます。囲碁の世界でも2016年に世界トップクラスの棋士が破れ、やはり2017年に勝負の決着がつきました。いずれもディープラーニングという方法を身につけたAI(人工知能)が勝利したのです。そして今やAIは家電や自動車に搭載される時代に入りつつあります。
私たちは何を得ようとしているのでしょうか。
人口減少は悪か
2011年、日本は人口減少国になったと言われています(2015年の国勢調査で実際に確認されました)。2017年に1億2653万人いた人口は、2065年には8808万人に、100年後には5050万人、200年後には1380万人ほどになると試算されています。
1600年頃の日本の人口が1000万人台、江戸時代を通じて3000万人程度に増加したと言われていますから、150年かけて増加した人口が、これから150年ほどかけて元に戻ることを意味します。
人口増加社会が善で人口減少社会が悪という常識は本当でしょうか。
「生物が生きていくためには一定の食糧と空間が必要である」という個体数の法則があります。人間もこの法則に倣うと言われています。
非正規雇用者の増加などによる若年層の低所得化は、食糧確保の困難さに通じています。結婚しても家族を養っていけないのではないか。未婚の大きな原因といわれています。
2050年には世界的な食糧争奪戦が勃発するともいわれています。
日本人は本能的に人口を減らしているのかもしれません。
私たちが失おうとしているものは何でしょうか。
グローバリゼーションとナショナリズムの狭間で
一方、平成に入って「グローバリゼーション」という語彙が一般的に用いられるようになりました。背景にあったのは、1980年代の金融ビックバンやインターネットの普及による情報革命です。おりしも平成元年(1989年)には、ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一、1991年にはソ連が解散し、冷戦が終結。国境を越えて政治や経済(ヒト・モノ・カネ・情報)が世界に拡がります。
リーマンショックは、グローバリゼーションの弊害の一端を示しています。グローバリゼーションの進展は30年を経て、世界は正反対の動きであるナショナリズムの高まりの中にあります。欧米では移民がもたらす問題をめぐり、人の移動を制約しようとしています。そのなかにあって昨年、日本では新たな残留資格を作り、出入国管理法を改正に踏み切りました。
私たちが得ようとしているものは何でしょうか。
また失おうとしているものは何でしょうか。
継続と変化は常なるもの
私たちにとって平成はどんな時代だったのか、気がつくままに簡単に振り返ってみました。
新しい元号の時代にも継続されるものは何か。
同時に観えてくる新たな断絶面は何か。
平成も残り4か月。
みなさんもそれぞれの30年を振り返ってみませんか。
様々な社会の変化がこれからの一人ひとりの仕事や働き方に変化を及ぼすからです。
今年も<Dラボ>の記事をお楽しみください。
一年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。




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