前回は習慣が重要化されるまで能力をトレーニングによって身につけるという話をしました。古くからその効果は伝えられています。
たとえば、「習慣は第二の天性!習慣の方が十倍も天性である」という老軍人ウェリントン公爵[i]の言葉を著書『心理学』(1892)で紹介したのは、ドラッカー教授の著書にも登場するウィリアム・ジェームズです。同書の第10章で「習慣」について述べており、私たちの生活が習慣の集まりであることを示しました。
このことに関して2006年にアメリカのデューク大学の学者が習慣の力に関する研究を発表しました。それによると私たちの行動の実に40%以上がその場の判断ではなく、習慣をよりどころにしているそうです。この数字の意味するところは、私たちは良くも悪くも習慣によって40%以上の行動が支配されているということです。
これは大変なことです。
日々、自動運転装置に半分身を預けて生活しているようなものです。
「あなたは、どのような習慣を身につけていますか?」。
この問いが重要になります。
成果の良し悪しは、良き習慣いかんで決まるからです。
さて、ここから習慣化するためには二つの要素が重要です。
以下、<読むべき章>と<4冊の概要>と<一部内容の紹介>についてです。
「何を」「どうやって」身につけるか…
たとえば、アメリカの父と評されるベンジャミン・フランクリンは、「決断: なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし」など13の徳目としてまとめた自らの信念を1週間に1つの徳目の修得を目指し、年に4回この過程を繰り返したといいます。「どうやって」に関係があります。
また現代のベストセラー『七つの習慣』は、身につけるべき習慣を明らかにし、「私たちの人格は、繰返される習慣の結果として育成される」という原則を示し、「何を」身に付ければいいかを中心に記述されました。具体的には以下の7つです。
第一の習慣:主体的である
第二の習慣:終わりを思い描くことから始める
第三の習慣:最優先事項を優先する
第四の習慣:Win-Winを考える
第五の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
第六の習慣:シナジーを創り出す
第七の習慣:刃を砥ぐ
これに対してごく最近出版された『習慣の力』(2006)は、「どうやって」身につけるかを集中的に記述した革新的な一冊です。個人ばかりではなく、組織や社会の習慣にまで目を向けています。
習慣という能力は、人類の叡智ともいうべきものです。周辺的あるいは末梢的な存在ではなく、一人ひとりの自己改革、自己創造という中核的な存在です。ドラッカー教授は、現代の組織社会において習慣的に身につけておくべき五つの能力を示しました(『経営者の条件』)。
①時間を管理する
②貢献をとおして成果をあげる
③自他の強みを生かす
④最も重要なことに集中する
⑤成果のあがる意思決定を行なう
「何を習慣化するか」を明確に意識しなければ、習慣化に成功することはありません。
「あなたは、どんな良き習慣を身に付けていますか?」
この問いが人生の成果に直結しています。
[i] 英国の将軍・政治家(1769~1852):ウォータローでナポレオン一世を破る。
ポイントをまとめておきます<実践の秘訣 その5>
①マネジメント能力はトレーニングによってのみ身につく
②無意識に能力を発揮できる状態、つまり習慣になるまでトレーニング継続する
ここまでの連載
その1:最初から理解しようとしない
その2:失敗してもやめない
その4:習慣になるまでトレーニングする
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