自社の強みと弱みに向き合うことで業績改善!本当に頼れる参謀はすぐ身近にいた!【株式会社 かめや】

自社の強みと弱みに向き合うことで業績改善!本当に頼れる参謀はすぐ身近にいた!?

記事の内容まとめ

  • 移動店販売事業の好調から、外食事業に乗り出したが失敗
  • 多額の負債を抱えて業績悪化
  • 社員同士の人間関係も悪くなる
  • ドラッカーの教えをきっかけに自社の強みと弱みに向き合う
  • 強みと弱みを上手に補い合う人事を行うと業績が改善していった

「強みを伸ばすということは、弱みを無視してよいということではない。弱みには常に関心を払わなければならない。しかし人が弱みを克服するのは、強みを伸ばすことによってである」


(『非営利組織の経営』p. 238)

人にはそれぞれ指紋があるように、人には固有の強みと弱みがある。 弱みには目が行きやすい。自覚もある。

しかし強みを自覚する人は少ない。意識せずとも自然に成果に結びついているからだ。

強みを自覚し、意識的に生かせば、さらに成果は上がる。弱みは誰かがカバーしてくれる。

他人の強みを使い、自分の弱みを意味のないものにする。それがチームだ。

1+1が2以上になる。相互補完だが、チーム力の源泉だ。

順風満帆かに思えた経営は、気付けば泥沼の崩壊状態に。スタッフ同士の仲も険悪で……

順風満帆かに思えた経営は、気付けば泥沼の崩壊状態に。スタッフ同士の仲も険悪で……

「組織として崩壊寸前だった」

2012年、社長就任時のかめや(長野県原村)の状況を、亀原 和成(かめはら かずなり)社長は振り返る。

かめやは長野県を中心にたこ焼き・たい焼き店「焼きたて屋」を展開する。1989年、亀原社長が先代の社長と共同で設立した。

コンテナハウスを使ってスーパーの敷地の一角などに出店。売れ行きが悪ければすぐ撤退し、売れる立地を探して移動する。

そんな機動的な出店戦略が当たって、2000年ごろから売り上げが急激の伸びた。

月に1坪(3.3㎡)当たり6,000万円を売り上げる店舗もあったという。売上高が10億円を超え、経常利益率は6、7%を確保していた。

しかしつまずきのきっかけは多角化だった。

新しい事業の柱を作ろうと考え、2003年からラーメン店やカフェの出店に乗り出したが、売り上げが伸び悩んでしまう。08年には外食事業からの撤退を始めたが、6,000~7,000万円ほどの負債を抱えた。

08年には外食事業からの撤退を始めたが、6,000~7,000万円ほどの負債を抱えた。

業績低迷が社内の人間関係の悪化を招くとは想像していなかったが……。

「役員会議では数字の話ばかりで、人のマネジメントは後回し。社員はみんな、顔を合わせれば誰かの批判を口にしていた」

古川博徳専務は当時の様子をそう語る。

亀原社長がバトンタッチを受けたのは、こんな混乱の最中だった。

ドラッカーが教えてくれた「強みを生かす」という発想が経営に光をもたらした

ドラッカーが教えてくれた「強みを生かす」という発想が経営に光をもたらした

経営について改めて学びたいと考えた亀原社長は、ドラッカーの勉強会に参加した。

そして、ドラッカーが示す経営の原理原則と、自分たちがしてきたことがまったく違っていたことに衝撃を受けた。

なかでも最も印象に残ったのは、「強みを生かす」という発想だ。

外食事業の不振を振り返り、「自社の強みが生きない事業だった」と痛感した。

「本業のたこ焼き・たい焼きの販売と似ているようで、実は全然違う商売だった。コンテナ方式の物販店で求められたのは、機敏に動く狩猟民族のようなスキル。一方、飲食店の運営には、地域に根差して顧客と関係を深める農耕民族的なスキルが必要だった。その違いに気付かなかったばかりに、経営危機を招いた」

ドラッカーの学びを経て、社員への接し方も変わった。

これまでは欠点ばかりをみて「なぜできないのか」と批判していたが、長所を探さなくては、社員も会社も成長しないと考えを改めた。

まず役員の自己分析から始めた。

外部のテストなどを活用してひとりひとりの強みを探った。すると、各自の持ち味と担当業務に乖離(かいり)があることがわかってきた。

自分の弱みを補ってくれる存在が必要だと気付いた

自分の弱みを補ってくれる存在が必要だと気付いた

例えば、亀原社長は「焼きたて屋」のFC(フランチャイズチェーン)オーナーの指導を担当していた。

しかし、不採算店を抱えるオーナーに、有効なテコ入れ策を提案することがなかなかできずにいた。

その理由を探ると、亀原社長は、新しいことへの挑戦は得意な反面、業務改善のような緻密さを求められる仕事が苦手だからだと分かった。

一方、古川専務は亀原社長と正反対のタイプだ。

そこで、不採算店の指導を古川専務が担当すると、不採算店が次々に黒字化。

一方、亀原社長は新規出店に専念して実績を上げた。

このように社長は“攻め”、専務は“守り”と、役割分担を明確にしたことで、お互いに仕事のやりがいが増し、成果も上がった。

「強みを生かした役割分担」の効果を実感したふたりは、社員ひとりひとりの持ち味も調べ、配置換えの際に考慮することにした。

例えば、「数字には弱いが後輩の指導が抜群にうまい」女性社員がいた。

そこで、彼女には「人付き合いは苦手だが数字に強い」男性社員とペアを組んでもらうことにした。そして、長野県のエリアリーダーを任せると、業績が上がったのだ。

このような女性社員の数字が弱いところを男性社員が、男性社員の人付き合いは苦手なところを女性社員が補い合う、いわば補完関係を生かした人員配置によって、本業が成長した例である。

15年6月期は当期利益2,500万円以上を計上。多角化の失敗で生んだ累積損失を一掃した。

この記事を読んでくれたあなたへの問い

現代経営学の巨匠ピーター・ドラッカー

現代経営学の巨匠ピーター・ドラッカー
(画像:wikipedia)

攻めと守り、あなたはどちらが得意ですか?

あなたの参謀はどうですか?

人にはそれぞれに持ち味があります。

得意分野に集中できると、余計なストレスや迷いを感じることなく、実力を発揮できます。

ぜひ、不得意分野を補いあえるパートナーを探してください。経営者にとっては参謀です。

理想の相手はあなたと正反対のタイプ。考え方が違い過ぎて普段は話が合わない人こそ、適任者かもしれません。

(<実践するマネジメント読書会>創始者・佐藤 等)

佐藤 等(さとう ひとし)

佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会監事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー [事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。

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