「成果」(results)とは、一見すると何の変哲もない言葉に思えるが、ドラッカーの思想を理解する上で非常に重要なキーワードである。かみ砕いていうと「成果」とは、組織が活動を通じて、顧客満足に貢献することをいう。コストをカットするだとか、売上げを前年比30%アップさせるだとかというのは、組織の内部の話であって、成果とはいえない。組織の内部に成果を見出そうとするのは、大きな誤りなのだ。それでは顧客の顔が見えなくなってしまう。だからこそドラッカーは「成果は外にある」と何度も繰り返し強調した。
「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」
組織の成果は何なのか? それは事業によって千差万別である。成果を定義するには、満足させなければならない顧客について掘り下げる必要がある。ドラッカーは「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」という問いを常に持ち続けよと説く。その問いに答えることができたとき、はじめて「われわれにとっての成果は何か」が見えてくる。
たとえば「コルゲート」(口腔ケア用品ブランド)という米企業は、かつては「即時納入」というポリシーを掲げていた。しかしこれは小売店に対するポリシーであって、本当の顧客(商品のエンドユーザー)には関係のない話だった。
あるときコルゲートは、ポリシーを「品切れナシ」に変更した。すると売上げが3%アップしたという。小さな変化だったかもしれないが、「いつでもどこでもコルゲートの商品を手に入れられる」という顧客満足に資する発想に転換したことで、実際にスタッフの仕事意識に変化がみられたという。
外部の世界に感覚を研ぎ澄ませば、成果のヒントが見えてくる
組織が追求すべき成果は、組織の外にある。組織の内部には存在しえない。このことは、いくら強調してもし過ぎることはない。
コルゲートという組織の外部には、「品切れ」という現象がしばしば発生していた。品切れが起きても、コルゲートの社員は別に困らない。「また明日になればきっと入荷しますから」と一言いえばそれで済む話だ。
しかし、コルゲートの歯磨き粉が欲しくてドラッグストアを訪れた顧客は、とても残念に思うだろう。「私はいま欲しくて店に来たのに」と。組織に必要なのは、こういった境遇に置かれた顧客の心中を察する思いやりである。「ガッカリさせたくない」――実はそこに、成果のヒントが隠れている。
ドラッカーは、大著『マネジメント』で「今日の組織が最も必要としているのは外に向けた感覚器官」と言った。データ分析は今日において非常に重要である。それは疑いようがない。しかし、データはデータであって、それ以上でも以下でもない。データをもって成果を定義することはできない。大切なのは、「顧客の心の内」を掘り下げて言語化する姿勢である。



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