フィードバックの重要性についてはよく言われています。しかし、
「初めての部下で、どうやってフィードバックしたらいいか分からない」
「優秀な部下にフィードバックなんてとてもできないよ・・・」
「ずっと我流でやってきたが、これで本当に正しいのだろうか?」
そんな悩みを抱えていらっしゃる方も多いと思います。
フィードバックのやり方は「技術」ですので、だれにでも身に付けられます。この記事では、フィードバックの目的や効果、一般的な3つのフレームワークを具体例付きで解説します。
さらに、20世紀の知の巨人、ピーター・F・ドラッカーから着想を得た、成果を出すためのフィードバックのやり方を伝授します。
私達Dラボは、ドラッカーの著書から仕事の極意を学ぶ実践するマネジメント読書会®を開催しています。多くの参加者から「読書会のおかげですぐやる人になれた」「売り上げがあがった」といった、嬉しいご報告をいただいております。
ぜひ、効果的なフィードバックのやり方を学んで、部下の能力を引き上げられる素晴らしい上司になってください。
目次
そもそも、フィードバックって何?
フィードバックとは、「目標達成のための行動に対する、評価とアドバイス」です。例えば、部下が取引先へのプレゼン資料を作成した際に、上司がフィードバックを行う、といった具合です。
フィードバックには、相手の「よい点」を評価するポジティブフィードバックと、「改善点」を指摘するネガティブフィードバックがあります。後者の場合は注意が必要です。いくら成長できるからといっても、自分の取り組みを指摘されることは快くありません。言葉遣いや態度はもちろんのこと、部下の人格を否定するのではなく、部下の「行動」を指摘するように心がけましょう。
フィードバックの目的や効果
フィードバックには沢山のメリットがあります。フィードバックの目的とその効果について見ていきましょう。
より質の高いものを作りあげる
一人でつくりあげたプレゼンと、上司からフィードバックを受けて完成させたプレゼン。どちらの方が、質が高くなるでしょうか。後者であることが圧倒的に多いでしょう。人間の注意力には限りがあり、一人では見落としてしまう部分はどうしてもあります。また、叩けば叩くほど強くなる鉄のように、仕事もフィードバックを通して精錬されていきます。ミスを防ぎ、質の高い仕事をする為に、フィードバックが必要なのです。
さらに、フィードバックというプロセスを経ることで、部下は自分の仕事を客観的に見られるようになります。一度その仕事が自分の手元から離れますし、上司と会話し、アウトプットをすることで、新たな視点が得られるからです。
部下とのコミュニケーションが増える
フィードバックの機会を設けることは、部下とのコミュニケーションを増やし、信頼関係の構築に役立ちます。また、コミュニケーションの本質は「目標への認識のズレをなくすこと」です。後に解説しますが、フィードバックを通して、上司と部下で目標を共有することが重要なのです。
部下のモチベーションアップ
部下のモチベーションアップと聞くと、まずは「褒める」ことが頭に浮かぶかもしれません。もちろん褒めることは大切ですが、ポジティブフィードバックであれ、ネガティブフィードバックであれ、大切なことは「目標の達成」と「部下の成長」を念頭に置いてフィードバックを行うことです。自分の仕事を真摯に評価し、アドバイスをくれる上司の存在は、部下にとってモチベーションになります。
フィードバックの3つのフレームワーク
次に、フィードバックに用いられる一般的な3つのフレームワークを、具体例付きで紹介します。
サンドウィッチ型
サンドイッチ型では、ポジティブ→ネガティブ→ポジティブの順にフィードバックします。指摘する側も、される側も、心理的な負担が少ない方法です。
しかし、伝えたいことはあくまで真ん中の「ネガティブ」です。どこが良くなかったのか、どう改善するべきなのかをはっきり伝えましょう。指摘したいポイントが前後のポジティブにもみ消されてしまわないように注意が必要です。
「〇〇さんが作成した資料、拝見しました。データが一目でわかるグラフがとても良かったです(ポジティブ)。
ただ、省略してもよいデータも混じっていました。本当に必要なデータはどれなのか、本当に全てをグラフにする必要があるかを考えてみてください(ネガティブ)。
そうすれば、OOさんの『わかりやすい資料を作る』という長所に、より磨きがかかりますよ(ポジティブ)。」
SBI型
SBI型とは、Situation(状況)Behavior(行動)Impact(影響)の頭文字をとったものです。「状況」→「行動」→「影響」の手順でフィードバックを行うことにより、部下が内容を理解しやすいというメリットがあります。フィードバックの前をする前に、一度SBI型に当てはめてみましょう。自分の頭も整理され、部下にフィードバックをしやすくなります。
- Situation(状況):「先ほどの会議で満場一致になった時のことです。」
- Behavior(行動):「〇〇さんは『あえて反対意見を考えてみませんか』と言ってくれましたね。」
- Impact(影響):「〇〇さんの発言のお陰で、再考する時間が生まれ、よりよい案ができあがりました。素晴らしい助言をありがとう。〇〇さんの全体を俯瞰する力、これからも頼りにしています。」
ペンドルトンルール
ペンドルトンルールは、部下が自ら改善策を見つけることを促すフィードバックです。上司が一方的に評価やアドバイスを言うのではなく、会話を通して部下に内省を促します。具体的には「話題の確認」→「良かった点」→「改善点」→「行動計画」→「まとめ」の順番に会話を進めます。
上司(話題の確認・良かった点):
「先ほどのプレゼン、要点が3つにまとめられており、非常に良かったです。他にも、手応えがあった部分はありますか?」
部下(良かった点):
「はい。写真や図に関しても、先輩方のご意見も伺い、必要なものだけを使用しました。お陰さまでスマートな発表ができました。」
上司(改善点):
「いろんな方の意見を聞いている姿勢がすばらしかったですね。逆に、もっと改善できる点はありますか?例えば、質疑応答はどうでしたか?」
部下(改善点・行動計画):
「そうですね。スムーズに答えられない質問がいくつかありました。今回はプレゼン練習ばかりに時間を取られてしまいました。次回のプレゼン前に、質疑応答の練習をさせていただけませんか?」
上司(行動計画):
「もちろんです。〇〇さんのプレゼン力に、さらに磨きをかけていきましょう。」
【成果を出す】1on1ミーティングでのフィードバック
上3つのフィードバック方法に加え、ドラッカーの思想から着想を得た、成果を出すためのフィードバックを紹介します。こちらのフィードバックは1on1ミーティングで行うのが効果的です。1on1ミーティングシートは、以下から無料でダウンロードできます。
ダウンロードはこちら①役割・期待・責任・成果を確認する
1on1ミーティングは一ヶ月おきに行うのが理想です。毎回のミーティングで、部下の役割とそれに伴う責任、周囲の期待と求められる成果を確認します。これらをハッキリと言語化することで、部下の仕事への意識が変わります。
②目標に対しての結果を確認する
今年1年の目標と、今月の目標が何であったのかを確認します。その上で、今月の成果を共有し、目標に対しての結果を振り返ります。1年の目標に近づいたり、今月の目標が達成できたのなら、その理由を考えます。逆も然りです。
③集中すべき業務と、やるべきでない業務を明確にする
今月の目標が達成できなかったのは、優先度の低い仕事に時間を使ってしまった可能性があります。あなたの部下が本来やるべき仕事は何でしょうか?
集中すべき業務と、そうでない業務を明確にしましょう。そうすれば、自分に関係の無い仕事までついつい引き受けてしまうクセを直していきましょう。本当にやるべき仕事に集中できれば、より大きな成果をあげられます。
④自己認識や働きやすさの向上
新たに分かった部下の強みや弱みがないか振り返りましょう。ドラッカーは著書「マネジメント」で、「人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである」と言っています。組織は、強みを出し合い、弱みを補うことで圧倒的な成果を生み出します。また最後に、今後の働き方を相談できる時間を作りましょう。
自分自身に行うフィードバック分析
フィードバックは他人にしてもらうものだと思われがちですが、自分自身のみで行うものもあります。ドラッカーは自分の強みを見つける方法として、「フィードバック分析」を提唱しました。詳しくは以下の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、フィードバックをテーマに、その目的と効果、一般的な3つのフレームワーク、そして、ドラッカーの思想に着目した1on1ミーティングでのフィードバックのやり方を紹介しました。フィードバックには方法があり、これは誰でも習得できます。初めて部下を持つ方でも大丈夫です。フィードバックを実践し、部下を成長させられる素晴らしい上司になってください。
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