初心者におすすめのドラッカーの本「ここから読むべき」その5『プロフェッショナルの条件』―ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から第4話【定期的に振り返る】

40冊近くあるドラッカー教授の著作。どれから読めばいいのとよく聞かれます。入口の入り口としてお薦めなのが『プロフェッショナルの条件』のPart3第1章「私の人生を変えた7つの経験」です。この連載は、この章をベースにしています。誰でも人生を変えるような経験をしているものです。自らのそのような経験に焦点を合わせ、充実した人生を送るために、ドラッカー教授の人生も参考にしましょう。この章をきっかけにドラッカー教授の著作をさらに手にしてもらえたら幸いです。

私は20歳の誕生日に、好運にも夕刊紙フランクフルター・ゲネラル・アンツァイガーという新聞社で記者兼編集者として働くことになりました。

人生の師に出会う 

そこで私は生涯の師に出会うのです。

伸長2メートルを超える厳格なプロイセン人。

名前はエーリッヒ・ドンブロウスキー。私の上司の編集長でした。

彼は、当時のヨーロッパ屈指のジャーナリストでした。

転職してまもなく私は3人の論説委員の一人に選ばれます。20歳の若造でなぜなれたのか…不思議かも知れません。当時、第一次世界大戦後のヨーロッパには、戦争のため30~40歳台の人材が払底していました。記者の平均年齢は驚くべきことに22歳前後でした。これが記者として成果をあげたこともない私が選ばれた理由です。

このような状況だったので編集長は、私たち若いスタッフの指導と訓練に徹敵的に取り組みました。私にとっては、小学校のエルザとゾフィー以来の偉大な教師となりました。

定期的に過去を振り返り、未来を問う 

私たちは、週末には1人ひとり編集長と向かい合い、1週間の仕事ぶりを振り返りました。加えて、半年ごとの新年と6月に半年間の仕事ぶりを話し合いました。

・優れた仕事は何だったか

・一生懸命やった仕事は何か

・一生懸命やらなかった仕事は何か

・お粗末な仕事や失敗した仕事は何か

これら過去を振り返る時間が終わると必ずこれからの半年を問う未来の質問が待っていました。

・この半年で集中することは何か

・この半年で改善することは何か

・この半年で学ぶべきことは何か

この様にして私は物書きとしての能力を叩き込まれました。

10年後に思い出し生涯の習慣に 

ところが、新聞社を辞めた私は、このようなことをしていたことさえ忘れていたのです。思い出したのは、およそ10年後の1940年代の初め、アメリカで大学教授になった頃でした。

それ以来私は、8月になると、2週間ほどの時間をつくり、1年を振り返る習慣を身につけました。何をやめ、何を始めるか、優先順位はどうするのか…

1年振り返ったあとは1年間の予定を立てます。計画どおり過ごせることは一度もありません。失敗も後悔もします。しかしその計画は、ヴェルディのいうビジョンにしたがって立てられます。私は、完全を求めて努力するための道具として今も計画を使っているのです。

 

※この文章は、筆者(佐藤等)がドラッカー教授の著作『プロフェッショナルの条件』などを基に主語を「私」に変え、事実や表現を追加してドラッカー教授が伝えたかった趣旨を変えることなく慎重に再現した文章です。内容に誤りなどがあれば是非ご指摘ください。また『プロフェッショナルの条件』の該当箇所はぜひお読みください。

 

ドラッカー教授の生涯に深く刻み込まれた経験は、のちの著作活動にも色濃く反映されています

「努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わないことである。強みに集中すべきである。無能を並の水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする。しかるに、多くの人たち、組織、そして学校の先生方が、無能を並にすることに懸命になっている。資源にしても時間にしても、強みをもとに、スターを生むために使うべきである」『経営者の条件』

 

もっと読む全8話

初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その1 

【教訓1】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その2
目標とビジョンをもって行動する―作曲家ヴェルディの教訓
 

【教訓2】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その3
神々が見ている―彫刻家フェイディアスの教訓 
 

【教訓3】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その4
一つのことに集中する―新聞記者時代の決心
 

【教訓4】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その5
定期的に検証と反省を行う―編集長の教訓
 

【教訓5】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その6
新しい仕事が要求するものを考える―シニアパートナーの教訓
 

【教訓6】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その7
書きとめておく―イエズス会とカルヴェン派の教訓 
 

【教訓7】初心者におすすめのドラッカーの本『プロフェッショナルの条件』その8
何によって知られたいか―シュンペーターの教訓
 

 

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

“初心者におすすめのドラッカーの本「ここから読むべき」その5『プロフェッショナルの条件』―ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から第4話【定期的に振り返る】”への2件のフィードバック

  1. 五月女 圭司 より:

    ドラッカー年譜をラクガキで描いきましたが、年代と重ねて読むと『プロフェッショナルの条件』は、また色々と違う気づきがありました。ありがとうございます!
    https://d-lab.management/?p=2518

  2. 佐藤 等 より:

    五月女さん、ありがとうございます。
    7つの経験は、ドラッカー教授の実際の年齢を意識しながら読むと、人生の節目のようなものが見えてきますね。

コメント

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