初心者におすすめのドラッカーの本「ここから読むべし」その6『プロフェッショナルの条件』―ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から第5話【新しい仕事が要求するものを考える】


40冊近くあるドラッカー教授の著作。どれから読めばいいのとよく聞かれます。入口の入り口としてお薦めなのが『プロフェッショナルの条件』のPart3第1章「私の人生を変えた7つの経験」です。この連載は、この章をベースにしています。誰でも人生を変えるような経験をしているものです。自らのそのような経験に焦点を合わせ、充実した人生を送るために、ドラッカー教授の人生も参考にしましょう。この章をきっかけにドラッカー教授の著作をさらに手にしてもらえたら幸いです。

私は、ドイツのハンブルグ、フランクフルトを経て、1933年にイギリスに渡しました。その年は、ナチスが少数与党として右派連合政権を成立させていました。「彼らと関わってはいけない」。彼らが政権を握る約1か月前、私はドイツを脱出しました。

私は、ロンドンのシティで1934年1月にマーチャントバンク(投資銀行)のフリードバーグ商会にアナリスト兼シニアパートナーの補佐役として就職。75歳になったばかりの創業者アーネスト・フリードバーグと若い2人のシニアパートナー(リチャードとロバートのモーゼル兄弟)に仕えました。私は25歳になっていました。(右は当時のシティ)

 

ドラッカー青年、叱責される

私は、はじめのころ、一番若いシニアパートナーの補佐役として働いていました。事件が起こったのは、就職して3カ月が経ったころです。創業者に部屋に呼ばれ叱責を受けたのです。

「君が入社してきたときはあまり評価していなかったし、今もそれは変わらない」

「リチャードが雇ったんだから、君は私には関係がない」

「しかし、それにしても君ほど仕事のできない人も珍しい」

「あきれるほどだ」

私は驚いた。リチャードは毎日のように私を褒めていたからだ。

私は聞いた。

「何かしてはいけないことをしましたか?」

「それともしなければいけないことで何かしていないことでもありましたか?」

「君は去年、投資銀行で証券アナリストの仕事をしていたね」

「君はいまももっぱら証券アナリストの仕事をしているね」

「それならわが社で働く必要なない」

「君はわが社の共同経営者の補佐役だ」

「ところが君は給料に見合ったことをまったくしていない」

「今日は金曜日だ。来週の火曜日に、これからは何をやるつもりか書き出してきてほしい。補佐役としての仕事の中身だ」

退室した私は相当頭に血が上っていた。

80点…人生の教訓を得る 

週末いっぱい考え自信をもって火曜日を迎えました。

そして彼は私の書き出したものを一瞥して言いました。

「80点だね。20点ほど不足している」

私は問うた。「何か抜けているのでしょうか」

「それを考えることも君の仕事ではないかね。ドラッカーさん」

この指摘には、正直頭にきたが、自分の間違いを認めざるを得ませんでした。

私は自分の仕事の内容や仕事の仕方をすっかりかました。

「私は、3人の共同経営者のために何をすべきだろうか」と自問しました。

具体的には、フリードバーグが好きで特異な仕事、つまり取引を存分に行えることと考えました。ボスに存分に仕事をさせることが役目であることに気づいたので問題の解決は簡単でした。

私は、このとき人生の教訓を得ました。

「新しい仕事を始めるたび、もしくは新たな役割を与えられたとき、仕事で成果をあげるには何をしなければならないか」を自問すること。

新しい任務で成功するうえで必要なことは、卓越した知識や卓越した才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において重要なことを明らかにすること。

そしてそれ集中することであること。

 

※この文章は、筆者(佐藤等)がドラッカー教授の著作『プロフェッショナルの条件』などを基に主語を「私」に変え、事実や表現を追加してドラッカー教授が伝えたかった趣旨を変えることなく慎重に再現した文章です。内容に誤りなどがあれば是非ご指摘ください。また『プロフェッショナルの条件』の該当箇所はぜひお読みください。

ドラッカー教授の生涯に深く刻み込まれた経験は、のちの著作活動にも色濃く反映されています

「上司の強みを生かすことは部下自身が成果をあげる鍵である。上司に認められることによって、初めて自らの貢献に焦点を合わせることが可能である。自らが信じることの実現が可能になる」(中略)「上司も人である。人であれば強みとともに弱みをもつ。しかし上司の強みを強調し、上司が得なことを行なえるようにすることによってのみ、部下たる者も成果をあげられるようになる」『経営者の条件』

 

ここまでの連載

その1.ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から

その2.第1話:目標とビジョンをもって行動する―作曲家ヴェルディの教訓 

その3.第2話:神々が見ている―彫刻家フェイディアスの教訓

その4.第3話:一つのことに集中する―新聞記者時代の決心 

その5.第4話:定期的に検証と反省を行う―編集長の教訓

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佐藤 等
<実践するマネジメント読書会>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱する佐藤等公認会計士事務所所長/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に約70名のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 自身のブログ<ドラッカリアン参上>は連続投稿4000日以上を達成して続伸中

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