引き続き、「事業のマネジメント」に関するものを取り上げています。前回、解説した原理の確認からはじめます。
<マネジメントの原理10>
「われわれの事業を定義する」(「われわれの事業は何か」を問う)
この問いに答えるためには、2つのことを明らかにしなければなりません。「われわれの顧客は誰か」と「顧客にとっての価値は何か」です。「誰に」「何を提供するのか」ということです。
実は、この問いはドラッカー教授の問いの中では有名です。『経営者に贈る5つの質問』というドラッカー教授の著作がありますが、その中の2つの質問です。
第一の質問は「われわれのミッションは何か」です。<マネジメントの原理3>に関係しています。
第二の質問が「われわれの顧客は誰か」、第三の質問が「顧客にとっての価値は何か」です。
主役は成果である
これらは原理的な問いだけに重要性も際立っています。ここまでくるとあと2つも興味がわきます。「われわれにとっての成果は何か」と「われわれの計画は何か」です。私たちは、計画を立てることから着手する癖がついています。しかし前提になるこれらの問いから導き出されない計画は、実行されない、あるいは実行しても意味のない計画になりがちです。
ドラッカー教授の問いに答えることは、常に原理・原則に沿うことを求められます。その意味で失敗しないマネジメントの幹に当たるところです。
さて5つの質問で用いられたコンセプトでドラッカー教授特有のものがあります。「成果」という言葉です。私は、セミナーなどで「この一年で出したい成果は何ですか」問うことがあります。書いてもらうと、「資格を取りたい」「家を建てたい」「売上を1億にしたい」「利益を倍にしたい」など自分が手に入れたいものが出てきます。
しかしドラッカー教授の「成果」は「外の世界における変化」なのです。具体的にはお客様に起る変化です。同じ言葉を使っていてもまったく異なる意味で理解しているとマネジメントすることが困難になります。マネジメント言語とでもいうべきもので、コンピュータ言語のように間違った使い方をすればプログラムが動かないようにマネジメントがうまく機能しません。
ドラッカー教授はマネジメントの「主役は成果である」といいます。「成果」は、マネジメントにおける最重要のコンセプトの一つです。ぜひ記憶してマネジメント言語として使えるようにしましょう。
<マネジメントの原理11>
成果とは外の世界における変化である
原理のマネジメントが必要な理由
第1回目は、原理がマネジメントにいかに必要かについて触れています。<方法ではな<原理を手にすること>の大切さについては何度も確認して欲しいと思います。




最新記事 by 佐藤 等 (全て見る)
- ドラッカーマネジメント流③【アフターコロナを意識した事業と仕事のマネジメント】「#わたしの非常事態宣言—でも悪いことばかりではないぞ」(佐藤等) - 2020年5月6日
- ドラッカーマネジメント流②【アフターコロナを意識した事業と仕事のマネジメント】「#わたしの非常事態宣言—でも悪いことばかりではないぞ」(佐藤等) - 2020年4月19日
- ドラッカーマネジメント流①【アフターコロナを意識した事業と仕事のマネジメント】「#わたしの非常事態宣言—でも悪いことばかりではないぞ」(佐藤等) - 2020年4月10日
- 100万部発行のエッセンシャル版『マネジメント』を『実践するドラッカー』の著者佐藤等(ドラッカー学会理事)が名言とともに実践ポイントを要約解説する - 2020年4月7日
- 「美しい会社とはなにか?」著者佐藤等が語る『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』の読み方使い方―マネジメントとリーダーシップの関係もわかりやすく解説 - 2019年12月23日