前回、利益は未来におけるコストであること、未来のリスクや不確実性に備える燃料庫だということを指摘しました。これも重要なマネジメントの原理で次のように表現されます。
<マネジメントの原理14>
利益は、未来のリスクと不確実性をカバーする
利益は人類が生み出した古い道具です。単に<売上高―費用>という差額を意味する会計上の利益だけの理解では十分ではありません。利益という道具には目的があるのです。利益はマネジメントの道具です。それは会計の道具としての利益という意味を超え、マネジメントの道具として明確な目的をもっています。
利益という道具の役割その1
第一の目的が「未来のリスクと不確実性に対する保険料」です。事業を行っているということは、資源を未来に賭けているようなものです。誰も未来で何が起こるかはわかりません。常に売れ残りなどのマーケットリスクと隣り合わせです。失敗すると事前に支払った人件費や投資は返ってきません。売れ残りというリスクをカバーする保険は世の中に存在しません。それをカバーしてくれるのは、利益、すなわち過去の利益の累計である剰余金だけです。
また、たとえばイノベーションなど新規性の高い事業は、その成立の可能性さえ不確実性です。新規事業を行ったが一度も黒字にならず撤退…などということもあります。この損失をカバーする保険も世の中にはありません。やはり利益でカバーするしかないのです。
このような意味でドラッカー教授は「利益は未来のための保険料」と表現しました。毎年、税金を払ったあと累積された利益は剰余金となり、「保険金」としてストックされていきます。その意味で剰余金が多い会社はリスクや不確実性に対する備えが大きいといえるでしょう。それは挑戦できる体質にあるということです。組織の未来を支えるもの、それが利益なのです。
毎回掲載している原理の定義です。
「原理とは、それに沿えば必ずうまくいくというものではないが、それから踏み外したときには確実に失敗する」。早稲田大学MBA西條剛央先生『チームの力』より
今回の原理に反する過度の節税志向は組織が未来に生きる力を奪うものです。「確実に失敗する」ことのないよう注意が必要です。
原理によるマネジメントが必要な理由
第1回目は、原理がマネジメントにいかに必要かについて触れています。<方法ではな<原理を手にすること>の大切さについては何度も確認して欲しいと思います。
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