今回も利益に関する原理です。今日原理は、マネジメントの意識に関わる本質的な行動原理ともいうべきものです。
<マネジメントの原理19>
企業行動は、利益の最大化ではなく、損失の回避である
なぜ、こんな原理が必要なのかと思うかもしれません。理由は一つです。企業に社会的な役割(ミッション)ある限り存続し続けることが社会的責任であるからです。そのためには利益とその蓄積が不可欠です。下記の原理そのためのものです。つまり利益なくして社会で役割を果たし続けることはできないということです。
<マネジメント原理14>
利益は、未来のリスクと不確実性をカバーする
利益とその蓄積(剰余金、内部留保)が無くなると、企業は事業を継続することができなくなります。自明のことです。
利益の蓄積という観点から考えれば、利益の最大化が行動原理として正しいように思われるかもしれません。しかし、利益の最大化を行動の原理と位置づけることで様々な歪が組織に生じます。たとえば、利益を優先して不正プログラムを搭載した車を販売し続けるとか、損失を先送りして不正会計を繰り返し虎の子の半導体事業を手放などの反社会的行為が起こっています。その根底あるのが、利益は最大化することが正しいという誤った認識があります。
「利益の最大化」という考え方は、古い経済学における一つの仮説(利潤動機)でそれが正しい行動原理であるということが歴史上証明されたことは一度もありません。しかし利益動機は、その後、独り歩きし、神格化され、都市伝説のように残り、経営の現場に悪影響を与えています。
安全で排ガス規制のルールに則った車を提供することは提供する者の前提条件であり、そのうえで利益が確保できないのであれば社会的な役割を果たせないことになります。
「利益の最大化」「損失回避」「必要な利益」…考え方が行動を変える
企業文化にまず浸透させなければならないのは、「損失の回避」という思考と行動原理です。これはある意味、「利益の最大化」よりも厳しい原理です。利益は絶対確保という基準です。その条件の下でミッションを果たすという固い決意でもあります。
できるだけ多くという姿勢と最低これだけは死守するという姿勢とでは、間違いなく行動が異なります。それはものの考え方の一つですが、いざという局面で決定的に行動が違ってきます。たとえば目の前にある利益獲得の機会に社の命運をかけてすべてをつぎ込むことにGOサインを出してしまうことがあるかもしれません。
しかし、「利益最大化」という思考では組織の存続を危うくするというレベルの自社では負えないリスクと利益の最大化を天秤にかけて、後者を選ぶ圧力となります。しかしこれは間違った判断です。
「最低限を目指す志向」からは、存亡のリスクをとることはないでしょう。日々の利益を着実に積み重ね、その結果としてより大きな機会にチャレンジする。 これがあるべき姿です。日本は世界一の企業長寿国です。背景に「損失回避」「必要な利益」という発想があったからこそ生まれた現実なのです。
「必要な利益」とは想定されるリスクや不確実性に耐えうる内部留保という意味です。具体的には、被災して数か月事業停止になったとしたら会社は維持できるのかと問われているのです。そう問われる理由は、繰り返しになりますが社会的な役割を果たし続けるためということになります。
「必要な利益」は意外と大きなものになります。しかしその額には理由があるということです。顧客のため働くスタッフのため職場を守るという理由があります。「利益の最大化」には意味がありません。意味がないということは、利益を目的化するなど組織が暴走する可能性も高いということです。「最大利益」「損失回避」「必要な利益」どれも異なるコンセプトです。これらのコンセプトの使い方ひとつで組織メンバーの意識を変えるのですから恐ろしいものです。今一度、よく考えてみましょう。
原理のマネジメントが必要な理由
第1回目は、原理がマネジメントにいかに必要かについて触れています。<方法ではな<原理を手にすること>の大切さについては何度も確認して欲しいと思います。
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