記事の内容まとめ
- 会社の経営はすべて人と人とが一緒になって働くことが基本です。そのことについて本気になって考えたのがドラッカー
- 企業の目的は利益ではなく、人々を幸福にすること
- 経営に万能薬はないが、経営者自身が実行するべき行動はある
- 「成果を上げる人と上げない人の差は才能ではない。幾つかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を身につけているかどうかの問題」
これまで多くの経営者に読まれてきたピーター・ドラッカー氏の経営書。
変化の大きな現代社会において、いま改めてその教えから学ぼうとする経営者が増えている。
ドラッカーの著書で学ぶ読書会などを通じ、企業の経営者にその教えを広めているドラッカー学会の佐藤等(さとう ひとし)氏が、多くの著作を訳しドラッカーの分身とも言われた上田惇生(うえだ あつお)・ものつくり大学名誉教授にドラッカーから学ぶ意義を問う。
企業の目的は利益ではなく人の幸福
佐藤「現代の経営者がドラッカーを読む意義は何でしょうか」
上田「ドラッカーは社会生態学者というのが正しいと思うのですが、もともとは政治学者です。
18世紀半ばから産業革命が起き、自由な経済活動で実りは一般国民のものになるはずだった。
しかしそうならずに、金持ちが独占した。
いい社会をつくるにはどうしたらいいか、というところからドラッカーの問題意識はスタートしているんです。
産業革命以降、生産手段が高度化し、人と人とが一緒に働くという組織社会がやってきました。それが現代社会です。
会社の経営はすべて人と人とが一緒になって働くことが基本です。そのことについて本気になって考えたのがドラッカーだったのです」
佐藤「コミュニケーションやリーダーシップ、モチベーションなど、これらは人が一緒に働くことによって生まれたテーマですよね」
上田「複雑で大きく変化してやまない世の中を、どうすればより良いものにしていけるか、が彼の世界観なんです。
我々日本人には古くから人を大事にする伝統があるのと同時に、諸行無常という考え方が根付いているので、ドラッカーを好きになってしまう。
だけど、ドラッカーを読む人たちが乗り越えなければならないジレンマがあるんです。
ドラッカーの教えを実現しようとすると、途中で魔物が襲ってきます。
それは「量を伸ばす」とか「利益を上げる」という魔物。
その魔物に捕まって、社員から搾取するようなことが起こる。」
佐藤「ドラッカーは「利益は事業の目的ではない。継続・発展させるための条件」と言っています」
上田「企業は利益を目的にしてはいけないんです。みんなそれを知っているんだけど、実際に利益が上がっている状況では、抵抗することは難しい。
企業の目的は人間の幸福であるはずです。
企業が影響を与え得る人間は2種類しかいない。
提供する商品やサービスを一緒につくっていくワーカーとしての人間、およびその商品やサービスの提供を受けるユーザーとしての人間。
この2種類の人々を幸せにすることが企業の役割であり、マネジメントの目的なんです。
工夫に工夫を重ねてお互いに教え合って事業を展開している小さな職場こそ、ワーカーとして、またユーザーとしての幸せを追求しやすいはずです」
ドラッカーは実践の哲学である
佐藤「マネジメントは「実践」だとドラッカーは言っていますね」
上田「彼の思想はハウツーなんだけど、小手先のものではなく、人間への愛情とか、真理、世界観に裏付けされています。
答えは状況によって変わるので、経営に万能薬はありません。
だから、彼の著書も「会社はあなたに敬意を払っていますか?」などと質問の形で書かれている。
本を読んだら、少なくとも明朝までに、その問いに答えるために経営者自身が実行する行動を1つか2つ、メモしておくことが大事なんです」
佐藤「私はドラッカーの原理を、事例を見ることによって分かりやすく解説してきました」
上田「私自身、1954年にブームになった3作目の『現代の経営』の影響をすごく受けているんです。
翻訳しているうちに、すべてを事業として見る癖がつきました。
『現代の経営』を読むだけでそうなるんですから、これを読んで事業に成功した人は非常に多いのです。
そして、ドラッカーから教わった人は、それを他の人にも教えるべきだと思いますね。社会の財として還元してほしい」
佐藤「上田先生が中小企業の経営者へ贈る、ドラッカーの言葉を一つ教えてください」
上田「成果を上げる人と上げない人の差は才能ではない。幾つかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を身につけているかどうかの問題」
難しいことじゃない。これだけのことなんです」
【ドラッカーの思想を中小企業が生かすポイント】
- 抽象的な問いに実践で答え、具体化する
- 利益とは手段であり、目的ではないと肝に銘じる
- 消費者であり労働者である個人の幸福追求を最優先する
ドラッカーを実践する経営者たちの生の声もぜひご覧ください!
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