札幌市出身。北海学園大学大学院の博士課程中退。経済学・社会学・科学哲学を学ぶ。在学中、ドラッカーの『経済人の終わり』を読んで衝撃を受ける。現在はWEBマーケティング会社に勤務。
目次
大学院に行かれていたのですね。やはり石山さんは読書が得意なのでしょうか?
ズバリいうと、そんなに得意ではないですよ(笑)
小説もビジネス書も、たくさん読むというよりは気に入った一冊を何度も読むタイプです。
そもそも子ども時代から、読書よりも圧倒的に漫画派だったので、実はいまでも活字に親しみは感じないんですよね。自分、ライターのはずなんですけど(笑)
なので、年間何百冊もよく本を読む人を素直に「すごいな」「うらやましい」と思います……。
どちらかというと、“本の虫”タイプの人よりも、「活字が苦手」「読書が嫌い」という人のほうが、親近感を抱きます。
そんな石山さんがドラッカーに出会ったきっかけは何ですか?
大学院のときです。近代経済学を批判していた人を色々研究していたのですが、調べているうちに『経済人の終わり』と出会いました。
当時の自分のテーマにあまりにピンポイントなタイトルだったので、気にならずにはいられませんでした。
石山さんにとってドラッカーの魅力は何ですか?
色々ありますが、ぎゅっと3つにまとめてみました。
①物事の本質を抉り出しているから普遍的な原理を学べる
ドラッカーは、普遍的な原理原則を言語化する達人です。
しかも、視点が一つではないところがスゴイ。
鳥の目・虫の目・魚の目・コウモリの目で、ビジネスや社会のことを見る人なので、「ドラッカーを学んだら一生モノの財産になるな」と思うようになりました。
経営者だけでなく、高校生・大学生・サラリーマン・個人事業主・パートタイムの人すべてに役立つ原理原則が書かれているので、みんなにおすすめしたいですね。
②企業の発展が社会を良くすると本気で信じている
ドラッカーは企業の存在意義を「社会に貢献すること」に見出しています。
社会に貢献している(顧客に価値を提供している)かぎりにおいて、ようやく存在が許される存在。それが企業なのだと彼はいいます。
だからこそ彼は、企業が常に顧客志向で価値を追求すれば、世の中は物心ともに発展し、思想やイデオロギーに支配されない社会をつくれるのだと信じているのです。
僕個人としては、このドラッカーの考え方にとても惹かれました。
企業のことを「利潤を最大化する存在」として定義する近代経済学とは、まったく違う世界観を持っていましたし、何よりドラッカーの言葉がスッと胸に落ちました。
現代では、拝金主義としての“悪い資本主義”に多くの批判がされており、それにかわる社会システムを模索する考えもあります。
しかし僕はドラッカーを学ぶことで、「資本主義かそれ以外か」という二項対立ではなく、「社会に価値を生み出す企業をたくさん増やすためにどうするべきか」と考えたほうが、とても力強く、建設的で、誰もが社会に希望を見出せると確信しました。
そんな考え方を、すにで戦前のドラッカーが考えていたわけです(笑) 誰もが「資本主義VS社会主義」の冷戦を生きていた時代に、“資本主義という括り方がナンセンスだ”みたいなことを主張していたわけですから。まさに脱帽です。
③けっきょく「人としてどうあるべきか」が大事だと考えている
ドラッカーは、日本人の精神性と非常に相性がいいのではないかと思います。
ドラッカーは経営テクニックのことについて論じませんでした。もとよりテクニックに意味を見出していなかったのかもしれません。それよりも彼は、「人こそすべて」みたいな境地に行きついていて、とても痛快というか、刺さる人には刺さる考え方をしているんです。
なによりドラッカーは、渋沢栄一を尊敬しているのですから、読み進めていけば、日本人ならドラッカーのものの見方・考え方に共鳴する部分がどんどん見つかるのではないでしょうか。
そんな石山さんは、どうして読書が苦手な人にドラッカーをおすすめするのですか?
どうせ読むなら一生の財産となる本を読んでほしいからです。
僕自身がそうだったのですが、読書が苦手な人(そんなに好きじゃない人)って、
「たくさんありすぎて何を読めばいいのかわからない」「せっかく読むなら面白い本が読みたいけど、探すの面倒くさい」という、せっかちだったり面倒くさがりだったり、そんな複雑な感情があると思うんですよ。
でも大学院に進学したからには、たくさん本を読まないと……という義務感が強くなり、研究費で本を買っては積む毎日を送っていました。もともと本を読むのが得意じゃないから、買うだけで満足しちゃうんですよね。
そんなあるとき、すごく印象的な出来事がありました。指導教授に「たくさん本を読むのを今すぐにやめろ」と怒られたことがあります。
ではどうすればいいのかと尋ねると、「一冊の本をきわめてみろ」と教授は言いました。
一冊の本を読み込み、血肉にする。それこそが価値ある読書なのだと教えられました。
「その作者のものの見方・考え方を習得すれば、物事を洞察する力がいっそう深くなる。いわば著者の思考は、世の中を覗く一つのレンズである。そのレンズは、世の中の出来事を解釈する道具として使える」と教授は私に言いました。
続けて教授は、「だからこそ一流の書物を読み込んだほうがいい。一時期は流行したが誰も語らなくなったような本は、けっきょく中身がないから、何も残らない。ただ時間の無駄である。そんな眉唾の本に時間を費やすくらいなら、何十年、何百年、何千年と語り継がれている名著を読み込んだほうが有意義だ」とさえ言いました。
僕はこのとき、本当の意味で読書の価値を知ったような気がしました。それからは、読む価値のあるものを見極めて、その一冊と真剣に向き合うような読み方をするようになりました。
ちなみにその後、私はその教授と、ある本を輪読することになります。実はその本がドラッカーの『断絶の時代』という本でした。
とくにどんな人にドラッカーが合うと思いますか?
自分も含めて、ドラッカーを愛読書にしている人たちを色々みていると、次の5つに特徴を整理できると思います。
- 「利益こそすべて」という考え方に違和感をおぼえている人
- お金よりも仕事のやりがいを大事にしたい人
- 組織づくりに悩んでいる人
- 「人」を大切にしたいと考えている人
- 経営はテクニックだけでは不十分だと感じている人
一つでも当てはまる方は、ぜひ読んでみてほしいですね。ドラッカーの言葉がグサッと刺さるのではないでしょうか。しかもただ「いいこと書いてあるな」では終わらないで、すぐ行動に移したくなる。そんな読書体験を味わえると思いますよ!
読書が苦手な人に言いたいことはありますか?
本は「読むもの」ではなく「使うもの」と考えると、自分の思考に“イノベーション”が起こります!
読みものと考えると億劫になってしまいますが、経営や仕事で成果を出す道具だと考えれば、つねに手元に置いておきたくなりますし、困ったことがあればつい開きたくなりますよ。
これからドラッカーを読む人におすすめしたい本はありますか?
『実践するドラッカー』シリーズです!
ドラッカーを「使う」本として特化しています。ボロボロになるまで使い込むと、どんどん愛着が湧いてくる。これはそんな本ですね。
さいごにメッセージをお願いします
翻訳者の上田先生もおっしゃっていましたが、ドラッカーは「行動する人」すべてに刺さる本です。
「読書をするための本」ではなく、「行動を起こすための道具」としてドラッカーと付き合えば、年間数百冊も本を読む以上に、仕事や人生で大きな成果をあげられるのではないかと信じています。
あらためて『実践するドラッカー』は、読書が苦手な人にこそすすめたいです!ぜひ手に取ってみてくださいね。まず最初は【思考編】をどうぞ!
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