公認会計士を続けながら6冊の本を出版できたドラッカーの時間管理の極意―その4 人生の時間の使い方を変える―レクリエーションからリ・クリェーションへ

39歳のとき私は、会計事務所を主宰しながら大学院に通うことになりました。その数年前、とある企業の立て直しという仕事がうまくいかず、結局、コンサルティング業務をやめる契機になりました。大きな廃棄です。

約15年間行っていたコンサルティングから撤退し、これまで従たる存在だった会計業務に仕事をシフトすることになったのです。人員も半減、一からのやり直しといってもよいでしょう。

仕事を続けるには、何か足りないものがある…

そう直観的に感じていました。大学院に足が向いたのもそのためだったのでしょう。

2年間の再教育期間は、まさに再生の機会となりました。そこで私は、所属したゼミで「読書会」という学習法に出合うことになります。その際に、読んだ最初の著作がドラッカー教授の『経営者の条件』(1966)でした。しかし、それは何の気なしに読みたいと思い手を挙げて始まったにすぎません。

週1回、指導教官にレポートを提出し、報告する形の読書会で、当初数冊のドラッカー教授の著作を読みました。多くの言葉が経営者には不可欠のものとして響きました。「これは伝えなければ…」と思ったことを憶えています。

入学早々に手にした『経営者の条件』に次の言葉を見つけました。

重要なことに取り組めるようになるには、ほかの人にできることはほかの人にやってもらうしかない。

大学院は、夜の時間と土曜日だけでしたが準備などを入れると相当時間を要するものです。この2年は、否応なしに仕事の一部を部下に任せなければ乗り切ることができませんでした。いわば強制廃棄が行われたのです。

ドラッカー教授の教えの実践は、本格的には大学院を出てから行うことになりますが、せっかく時間を作って大学院に来たからには、修了しても元の時間の使い方だけには戻らないと固く決意したことを憶えています。

大学院を修了し41歳になっていた私は、ドラッカー教授の教えの実践に集中することになります。2002年のことです。

このときは、集中するポイントを確信をもって決めたわけではありませんでした。「とりあえず何に集中するかを決めなければ…」と考えました。

それは、ドラッカー教授の教えの実践を「成果をあげる能力」から始めていたからであり、その能力の一つである「集中」に関して『経営者の条件』ある次の言葉が頭を離れなかったからです。

成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。

素直に、第一に集中のことを考え、私はドラッカー教授の教えの正しさを証明するために大胆にも「ドラッカーに集中してみよう」と考えたのです。大学院を修了したあとの仕事以外の私の時間の主要な使い先が決まりました。

たとえば、大学院進学とともにゴルフやゼミで必要な読書以外もやめていましたのでその後もその方針は維持しました。最初の数年はドラッカー教授の著作以外は読まないと決心していました。それは、他の本を読むことにより、ドラッカー教授の思想と混濁する可能性を排除する自信がなかったからです。

私の時間は、余暇(レクリエーション)から自己再生(リ・クリェーション)のために使われることになったのです。

本当に成果は出るのか…

成果が出るには時間がかかります。とりあえず時間を確保して続けること。そう言い聞かせて2003年1月にメルマガを始め(毎月3号で現在572号~2018.11.26)、2003年4月から読書会を始め、2004年4月からblogを始めました。これらは今でも続いています。

人生100年時代の時間の使い方は、余暇(レクリエーション)から自己再生(リ・クリェーション)へ変えることが重要であると人生100年時代の生き方を記す『ライフシフト』(リンダ グラットンら)にあります。私は、コンサルティングからの撤退を一つの機会として、再生のために何か足りないものを探し始めていたのです。それは誰かに教えられたものでもなく、直観的に取っていた行動でした。

<問い>

自己再生の時間をどうやって確保しますか。

 

ここまでの記事

第1回 体系的廃棄というタイム・マネジメント

第2回 タイム・マネジメントに成功するための決定的な条件

第3回 タイム・マネジメントの目的を考える

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

“公認会計士を続けながら6冊の本を出版できたドラッカーの時間管理の極意―その4 人生の時間の使い方を変える―レクリエーションからリ・クリェーションへ”への2件のフィードバック

  1. 瀬川 智美子 より:

    自己再生の時間をどうやって確保するか。成果が出るには時間がかかる。とりあえず時間を確保する。続ける。素直に、第一に集中のことを考える。

    上記文章、せっせと手帳に書き写し、暗記にいそしむ。(誰かに教えられたものでもなく直感的に取っている行動)

    佐藤先生の記事を読むたび私に起きるナゾの行動。これは佐藤先生のことばをドラッカー教授のことばと同じように道具として使えるようになりたいゆえにとる行動なのか…。不明。(中途半端な自己分析)

    そうだと仮定して。

    ではいったい、その道具を、誰のために、何のために、どこで使いたいというのか、私は…。

    しばし自分に問いかけてみる。「成果は外にある」と肝に銘じながら。

  2. 佐藤 等 より:

    瀬川さん、コメントありがとうございます。

    ナゾの行動…も繰り返すうちに精度が上がってくることを実感するかもしれません。
    私も非論理派なので直感的に動くことが多々あり。
    しかし繰り返すうちに「大局観」(将棋などで使われるコンセプト)みたいなものが働くようになり、これはダメだろうな…とか、これは続ける価値がありそうだ…とかに至るような気がします。

    手帳に書き写し、暗記にいそしむ…FT養成講座を通じて得意のワークスタイルになってきましたね。

    誰のために、何のために、使いたいというのか…これはきっと実際使う人が決めることかも。
    私の場合は、その道具の伝達者と役割を決めています。

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