ドラッカーの事業とは?事業の目的や定義の仕方を解説します。


ドラッカーの事業とは?事業の目的や定義の仕方を解説します。

事業は何ですか?」と訊かれたとき、あなたは自信を持って答えることができるだろうか。「通信業です」「広告代理店です」「飲食店です」……ドラッカーにいわせれば、これらの回答は、事業について何も答えていることにはならない。

ドラッカーのいう「事業」とは、【どんな顧客の、どんな欲求を満たす商品やサービスを提供しているのか】という顧客志向の定義のことである。

曖昧な事業の定義は、組織の黄色信号を意味する。強力なライバルが現れたときに意思決定がブレる、苦境に陥ったときの判断を誤る、時代の変化に気づかず取り残されるなど……「あなたの事業は何ですか?」に明快に答えられなければ、こうした問題が起こってしまうのだ。

「われわれの事業は何か」という問いは、数々の大企業を苦境から救った重要な問いである。

当記事では、“マネジメントの父”ことピーター・F・ドラッカーが論じた「事業」の意味をわかりやすく解説し、今日明日にでも実践できるようにコンパクトに要点をまとめた。

今後の事業の方向性がわからなくなったり、競合とどう戦っていくか悩んでいるという方には必読の内容となっている。ぜひ読んでみてほしい。

ドラッカーのいう事業とは「顧客への貢献」である

事業の目的は「顧客の創造」

顧客が買うものは製品ではない。欲求の充足である。顧客が買うものは価値である。

ドラッカー『マネジメント』より

何のために事業を行うのか。事業の目的はただひとつ、顧客が欲しいと思う製品・サービスを提供し、顧客の価値実現に貢献することである。これをドラッカーは「顧客の創造」といった。

「自分たちが売りたいもの」を売るのではなく、「顧客が欲しいと思うもの」を売る。それが顧客の創造である。顧客が欲するものを知るには、「顧客は誰か」を問わなければならない。

事業の定義は顧客で決まる

事業は、社名や定款や設立趣意書によって定義されるのではない。顧客が財やサービスを購入することにより満足させる欲求によって定義される。

ドラッカー『マネジメント』より

事業とは、顧客に貢献することである。したがって、事業を行う意味・内容は、顧客によって定義される。

後述するが、事業を定義するには「顧客は誰か、どこにいるか」「顧客にとっての価値は何か」「われわれの事業は何か」「現在の消費者が満たされていない欲求は何か」「われわれの事業は何であるべきか」「既存の製品・サービス・流通チャネルが今日の社会構造に適合しているか。合っていないならば、それらのものをいかにして廃棄するか」を問わなければならない。

事業を定義しないとどうなる?

ほとんど常に、事業の目的とミッションを検討していないことが失敗と挫折の最大の原因である。

ドラッカー『マネジメント』より

顧客のニーズからズレる

ドラッカーにいわせれば、顧客は製品それ自体に興味を持っていない。顧客が関心を持っているのは、その製品やサービスが、自分の欲求・価値をどれだけ満たしてくれるのかだけである。

事業を定義しなければ、当然、「自分たちの売りたいもの」を売ろうとするわけだから、顧客のニーズから大きく乖離した製品やサービスを生み出すことになる。顧客に貢献できない事業は、社会に必要とされていないことと同義である。

時代の変化に取り残される

世の中は絶えず変化している。人々の生活様式が変われば、価値観も変わる。価値観が変われば、自己実現欲求も変わってゆく。それが時代の変化である。

「われわれの事業は何か」を常に問い続けよとドラッカーはいう。さもなければ、時代に取り残され、事業は陳腐化する。待っているのは倒産である。

社員の主体性が育まれにくい

何のために事業を行っているのか。組織の人間が誰一人そのことを理解していなければ、視座が低くなり、意思決定の幅も狭まる。

事業のビジョンが見えないとき、人は主体性を失う。自分の意思決定に誇りや勇気を持てなくなる。言われたことしかできないスタッフが生まれるのは、そのためである。

波に乗るだけの企業になる

現在のメイン事業が、一時の流行に乗っているだけなのか、それとも持続可能な事業なのか。3年後には運営が危ぶまれるのか、それとも10年・20年先を見据えることができるのか。

事業の定義が曖昧だと、これらの問いに答えることができない。現在の顧客が一体どんな欲求を持っているのかを見極められないからである。ドラッカーは次のように述べる。

消費者の欲求のうち「今日の財やサービスで満たされていない欲求は何か」を問う必要がある。この問いを発し、かつ正しく答える能力をもつことが、波に乗るだけの企業と成長する企業との差になる。波に乗っているだけの企業は、波とともに衰退する。

ドラッカー『マネジメント』より

苦境に陥ったときに意思決定できない

世の中の動きをコントロールすることはできない。社会の構造が変化するとき、事業は変化に対応するためのストレス(負荷)を覚悟しなければならない。それは、どんなに調子のいい事業でも避けられない宿命である。

しかし事業を定義していなければ、大事な場面で適切な意思決定すらできなくなる。1929年の世界恐慌で苦境に陥ったGM(ゼネラルモーターズ)は、「キャデラックの競争相手はミンクのコートとダイアモンドであり、顧客が買っているのは輸送手段ではなくステータスなのだ」と明確な立場を示した。それが功を奏し、大不況にもかかわらず、キャデラックは大成長を遂げることができた。

事業を定義するための4つの問い

①顧客は誰か、どこにいるか

あなたの事業は、どんな顧客にどんな貢献ができるのか。「顧客は誰か、どこにいるか」は、事業の目的とミッションを定義するうえで、もっとも重要な最初の問いである。これを問われたとき、明快に答えることができなければならない。

②顧客にとっての価値は何か

その顧客は、どんな自分になりたいと思っているのだろうか。街で遊ぶ女子高生にとって、価値のある靴とは?子ども連れて歩く主婦にとって、靴の価値とは?顧客がリアルに感じている現実世界をつぶさに観察しなければならない。

③現在の消費者が満たされていない欲求は何か

ビジネスには、新しい価値を提供すると同時に、新しい問題を生み出す両側面を持つ。たとえば食品添加物は、食料の長期保存を可能とし、価格や流通にイノベーションを起こしたが、同時に「健康被害」という問題をも生み出した。そこにこそ、新しいビジネスのチャンスがある。オーガニック食材ビジネスは、「子どもの健康を守りたい」という両親の満たされないニーズに貢献できる可能性がある。

④われわれの事業は何であるべきか

成功は常に、その成功をもたらした行動を陳腐化する。新しい現実をつくり出す。新しい問題をつくり出す。「そうして幸せに暮らしました」で終わるのは、お伽噺だけである。

ドラッカー『マネジメント』より

経済構造、社会構造、政治構造、流通構造、消費者の価値観。ありとあらゆるものが日々刻々と変わり続けている。「われわれの事業は何であるべきか」を常に問い続けることで、すでに通用しなくなった方法や製品を発見できるようになる。ドラッカーはこれを「体系的廃棄」と呼んだ。

さいごに:ドラッカーは実践がすべて!

ドラッカーを単なる「読書」で終わらせるのは非常に惜しい。わたしたちDラボは、これまでたくさんの経営者と出会い、たくさんの「実践の成功」を目撃してきた。ユニクロの創業者やGoogleのCEOがドラッカーを実践して成果を出したように、あなたもきっと、ドラッカーを組織や顧客のために活用できるはずだ。

わたしたちは、実例を交えながらドラッカーの実践を学ぶ勉強会を主催している。個人事業主や中小企業の経営者はもちろん、起業を目指す学生も大歓迎だ。興味のある方は、まずはぜひ一度、問い合わせてみてほしい。

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