初心者におすすめのドラッカーの本「ここから読むべし」その4『プロフェッショナルの条件』―ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から第3話【集中して学ぶ】


40冊近くあるドラッカー教授の著作。どれから読めばいいのとよく聞かれます。入口の入り口としてお薦めなのが『プロフェッショナルの条件』のPart3第1章「私の人生を変えた7つの経験」です。この連載は、この章をベースにしています。誰でも人生を変えるような経験をしているものです。自らのそのような経験に焦点を合わせ、充実した人生を送るために、ドラッカー教授の人生も参考にしましょう。この章をきっかけにドラッカー教授の著作をさらに手にしてもらえたら幸いです。

1928年、私(ドラッカー)はハンブルグから国際的金融都市フランクフルトに移り住みました。私は、この土地ではじめて本格的に働き出すことになります。そこで2つの教訓を得ます。今日は、そのうちの一つです。その前に私の最初の転職と次の転職について聞いて下さい。

1929年の世界恐慌による転職が招いた好運 

1929年、私は証券アナリストとして証券会社に転職しました。そこで1929年9月には「ニューヨーク証券取引所はその後も上がる」という計量経済学の論文を投稿しました。

しかし同年10月、世界恐慌の引き金となるニューヨーク株式相場の大暴落に見舞われます。その論文の存在は、思い出すだけでも恥ずかものです。当然、証券会社は倒産…私は失業者となりました。

好運にも翌月、前職の仕事の縁で次の仕事につくことができました。夕刊紙フランクフルター・ゲネラル・アンツァイガーという新聞社の海外ニュースと経済ニュースの編集者です。ちょうど20歳の誕生日でした。

20歳の若造でなぜ編集者になれたのか…不思議かも知れません。当時、第一次世界大戦後のヨーロッパには、戦争のため30~40歳台の人材が払底していました。若造にそのような仕事を任せるとの判断に疑問の声があがると、社主が平然と「海外面も経済面も誰も読んでいない」といったそうです。まったくその通りだと思います。運がよかったとしか言いようがありません。

仕事をとおして教訓を得る 

当時、「ビジョンをもち一生をかけて完全を求める」というヴェルディフェイディアスの教訓だけは身につけていました。最初の仕事である商社見習から本格的な仕事、新聞記者に就いたとき私は一つの決心をします。フランクフルトで身につけた教訓は仕事に直接関係するものでした。

新聞記者や編集者が取り上げる記事は様々です。私は、有能な記者として知らなければならないことは、すべて知ろうと決心したのです。これも完全を求めるというヴェルディやフェイディアスの影響なのかもしれません。

そこで私がとった行動は、仕事が終わった午後の時間を使って何が何でも勉強することにしました。仕事は午後、2時15分に終わりました。夕刊専門誌だったので朝の6時が始業だったからです。

私が主に学んだのは、国際関係、国際法、制度や機関、金融や歴史などでした。このとき自分なりの学び方を身につけました。

それは、一時に一つのことを集中して学ぶという方法でした。この方法は生涯の学習法となりました。

豊かな人生を送るための学習法を身につける 

今では、毎年新しいテーマを見つけ、3カ月集中して学んできます。たとえば「明王朝時代の中国の美術」などをテーマにします。他には3年プロジェクトもあります。「シェークスピア全集をゆっくりと注意深く読み直す」ことなどを行っています。

このときの決心は、文筆家である私の人生を豊かにしました。いろいろな知識を手に入れることができただけではありません。

それぞれの分野に新しい体系やアプローチ、方法があることを知りました。それぞれのテーマに、別の前提や仮定があり、別の方法論がありましたので多様な思考や方法を身につけることができました。

20歳の決心が生涯で20を超える専門領域の知識を私にもたらしました。経済や経営だけではなく、統計や日本画などの講座を大学でもち、アメリカの技術史会の会長を努めました。集中して学ぶことの効果を実感せざるを得ません。

 

※この文章は、筆者(佐藤等)がドラッカー教授の著作『プロフェッショナルの条件』などを基に主語を「私」に変え、事実や表現を追加してドラッカー教授が伝えたかった趣旨を変えることなく慎重に再現した文章です。内容に誤りなどがあれば是非ご指摘ください。また『プロフェッショナルの条件』の該当箇所はぜひお読みください。

 

ドラッカー教授の生涯に深く刻み込まれた経験は、のちの著作活動にも色濃く反映されています

「知識社会においては、継続学習の方法を身につけておかなければならない。内容そのものよりも継続学習の能力や意欲のほうが大切である。ポスト資本主義社会では、継続学習が欠かせない。学習の習慣化が不可欠である」『ポスト資本主義社会』

 

ここまでの連載

その1.ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から

その2.第1話:目標とビジョンをもって行動する―作曲家ヴェルディの教訓 

その3.第2話:神々が見ている―彫刻家フェイディアスの教訓

 

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佐藤 等
<実践するマネジメント読書会>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱する佐藤等公認会計士事務所所長/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に約70名のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 自身のブログ<ドラッカリアン参上>は連続投稿4000日以上を達成して続伸中

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