初心者におすすめのドラッカーの本「ここから読むべし」その7『プロフェッショナルの条件』―ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から第6話【事前に書き留め、事後に振り返る】


40冊近くあるドラッカー教授の著作。どれから読めばいいのとよく聞かれます。入口の入り口としてお薦めなのが『プロフェッショナルの条件』のPart3第1章「私の人生を変えた7つの経験」です。この連載は、この章をベースにしています。誰でも人生を変えるような経験をしているものです。自らのそのような経験に焦点を合わせ、充実した人生を送るために、ドラッカー教授の人生も参考にしましょう。この章をきっかけにドラッカー教授の著作をさらに手にしてもらえたら幸いです。

1937年、私は、ヨーロッパ大陸からイギリスを経由し、この年に結婚したドリスを伴ってアメリカに移り住むことにしました。私は27歳になっていました。

ロンドン脱出に際し、フリードバーグ商会は結婚と旅立ちを祝って豪華客船の1等船室のチケットをプレゼントしてくれました。2週間のハネムーンの間も第二次世界大戦の足音が気になっていました。

未来志向の国アメリカに立つ

ニューヨークでの生活は、比較的順調にスタートしました。フリードバーグ商会の米国駐在エコノミスト兼ファンドマネジャー、ファイナンシャル・タイムなど英国の大手新聞社向けにアメリカの記事を送る記者の仕事を行うことができたからです。

その他にもワシントン・ポストなどと欧州情勢を知らせる記事を投稿する契約を結びました。複業生活の始まりです。

アメリカに来て感じたことは、未来志向ということです。第二次世界大戦の勃発が迫りくる中、ヨーロッパは「戦前」(第一次世界大戦前ということ)から抜け出せずにいました。多くのヨーロッパ人がそうであったように私も例外ではなく、アメリカに来て初めて「戦前」と決別できたと思います。

渡米後、私の処女作『「経済人」の終わり』(1939)がやっと日の目を見ます。同書は、ナチスドイツが政権を奪取する前に執筆に着手、1938年に脱稿していました。

同書は、ヨーロッパの「戦前」がテーマでした。時代の変わり目でもがき苦しむ大衆の姿を描写しました。「政治の本」であり、引受先がなかなか見つかりませんでした。

ロンドン時代家からの知遇、ノエル・ブレイルズフォードの縁で出版に至りました。この本は、後にウィンストン・チャーチルの激賞を受けました。

その後、私は第二作『産業人の未来』(1942)、『企業とは何か』(1946)』を著し。政治の書として位置づけを明確にしました。

そんな中、出合った教訓があります。

修道士らが実践していた方法を知る

私は、新聞記者時代に身につけた教訓にならい定期的に集中してテーマを決めて学んでいました。1945年頃のテーマは、「近世初期、つまり15世紀から16世紀にかけてのヨーロッパ」でした。

私は、このテーマを通して、当時、2つの社会的機関が奇しくも、同じ時期に、同じ方法によって成長していたことを知りました。

その社会的機関とは、カトリック社会におけるイエズス会(1534年創設)と北ヨーロッパを中心とするプロテスタント社会におけるカルバン派(1541年から改革実行)でした。

イエズス会の修道士やカルバン派の牧師が用いた方法とは、何か重要な決定をする際に、その期待する結果を書きとめておかなければならないというものでした。

そして一定期間後、たとえば9か月後に、実際の結果と期待を比べなければなりませんでした。

その効果は顕著でした。この振り返りの過程で次のことが見えてきました。(写真は若いドラッカーに大きな影響を与えたと言われるイエズス会司祭バルタサル・グラシアン1601~1658年)

「自分は何が良く行えるか」

「自分の強みは何か」

「自分の強みをいかにして強化するか」

「何を学ばなければならないか」

「どのような能力が欠けているか」

「何がよくできないか」

「何について改善する必要があるか」

「いかなる改善が必要か」

「自分ができないこと、したがって行おうとしてはならないことは何か」

「自分には何ができないか」

私は、その後、50年以上この方法を続けています。これらの問いに向き合うことは継続学習の要です。

※この文章は、筆者(佐藤等)がドラッカー教授の著作『プロフェッショナルの条件』などを基に主語を「私」に変え、事実や表現を追加してドラッカー教授が伝えたかった趣旨を変えることなく慎重に再現した文章です。内容に誤りなどがあれば是非ご指摘ください。また『プロフェッショナルの条件』の該当箇所はぜひお読みください。

ドラッカー教授の生涯に深く刻み込まれた経験は、のちの著作活動にも色濃く反映されています

強みを知る方法は一つしかない。フィードバック 分析である。何かをすることに決めたならば何を期待するかを直ちに書きとめておかなければ ならない。そして九 カ月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合 しなければならない。『明日を支配する もの』

ここまでの連載

その1.ドラッカー教授の「人生を変えた7つの経験」から

その2.第1話:目標とビジョンをもって行動する―作曲家ヴェルディの教訓 

その3.第2話:神々が見ている―彫刻家フェイディアスの教訓

その4.第3話:一つのことに集中する―新聞記者時代の決心 

その5.第4話:定期的に検証と反省を行う―編集長の教訓

その6.第5話:新しい仕事が要求するものを考える―シニアパートナーの教訓

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佐藤 等
<実践するマネジメント読書会>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱する佐藤等公認会計士事務所所長/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に約70名のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 自身のブログ<ドラッカリアン参上>は連続投稿4000日以上を達成して続伸中

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