マネジメントとは何か―ドラッカー教授から学ぶ実践に不可欠な<マネジメントの原理>【第5回】組織が存在する目的は何か③

組織という道具には目的がある【マネジメントの原理2】

まずは復習からです。組織が道具である以上、必ず目的があります。

したがって社会的道具としての組織にも必ず目的があります。

組織の目的は、次の3つです(前々回掲載済みです―以下再掲)。

第一に、社会において特有の役割(ミッション)を果たすことである
第二に、所属する人を成長させることである
第三に、社会にある新しい課題を解決することである

今日は、第三の目的について考えてみます。

現代は組織社会といわれています。組織という道具を使って社会の課題を解決する時代だということです。250年前ほど前に人類は、組織という道具を生み出しました。産業革命により工場という生産組織がイギリスをはじめとして世界各地に続々と誕生しました。

もちろん人が集まって仕事をする工房は、少数ながら世界各地にありました。しかしそれは特殊な存在でした。農業も工業も多くの生産単位は家族でした。多くのひとが生産したものを市場(いちば)に持ち込み、換金して必要な物を買っていました。その意味で個人が社会と直接結びついていた時代ということができます。

先進国でも組織が中心的な生産単位となったのは戦後でした。日本でも組織で働いている人が、自営者を上回ったのは1960年代です。60年程度の歴史です。人が組織で働く時代に必要な能力がマネジメントです。この能力は、経営トップだけが身につけていればよいというものではありません。組織で働くすべての人は、組織という道具の使い方を身につけておくことを求められています。

さて、このような組織時代においては、現に社会課題を解消しているは組織だということです。たとえば、教育は学校という組織で提供さています。また生産もメーカ―が中心となり、流通も場を動かし、そこで荷物を運んでいる運送もほとんど組織が支えています。個人は消費者ですが、ほとんどの人が大小を問わす組織に属して働いている時代です。

その意味で現在、社会が必要としている多くの機能を担っているは組織です。このことは、新しい社会課題を解決する主体者(プレイヤー)であることも意味しています。エネルギー問題、環境保全問題、若年労働力の不足、グローバル経済への対応などの問題を解決し、適応していくのは組織です。政治が社会課題を解決することはありません。政治はプレイヤーにはなれないからです。

たとえば若年労働者の不足に対して24時間化の見直し、無人レジ導入などの施策をなどに動いているのは、政治家ではなく企業です。新しい社会課題への対応は、イノベーションの機会でもあります。

社会という人間の環境は常に変動しています。環境変動に対応する主体者は企業などの組織です。第一に、既存の事業は日々陳腐化します。第二に、組織は、社会の変化を敏感にとらえ、変化をイノベーション機会に変えなければなりません。いつか既存事業を廃棄し、新規事業を立ち上げなければならないからです。社会の道具である組織の目的として新しい社会課題に目を向けましょう。

【マネジメント原理5】
組織は新しい社会課題を解決する主体者である

もっと詳しく学びたい方へ ~社会生態学という知識体系を身につける~

社会の変化を観察するための知識体系を「社会生態学」といいます。社会生態学の目的は、正しい行動をとることです。

そのためには社会という環境をよく観察することです。なにがこれまでと同じで、なにが違っているか。この視点を継続と変化といいます。昨日とは違う今日は何かに目を向けるということです。「新しい現実」、「すでに起こった未来」などは、変化を見出すための象徴的なコンセプトです。

社会生態学は大きな一つの知識体系です。これについては機会をあらためて記したいと思います。

原理のマネジメントが必要な理由

第1回目は、原理がマネジメントにいかに必要かについて触れています。<方法ではなく原理を手にすること>の大切さについては何度も確認して欲しいと思います。

 

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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