組織という道具には目的がある【マネジメントの原理2】
前回の復習からです。組織が道具である以上、必ず目的があります。
したがって社会的道具としての組織にも必ず目的があります。
組織の目的は、次の3つです(前々回掲載済みです―以下再掲)。
第一に、社会において特有の役割(ミッション)を果たすことです。
第二に、所属する人を成長させることです。
第三に、社会にある新しい課題を解決することです。
今日は、第二の目的は、組織に所属する人を成長させることについて考えてみます。
組織という道具は実質的に人によって運営されています。よく経営資源をヒト・モノ・カネなどといいますが、お金に色は着いていません。1万円札は1万円の価値。札に個性はありません。モノには個性のあるものもありますが(絵画や土地)、多くのモノはどこかで調達出来たり、代替性があったりします。
本質的な差が出るのはヒトという経営財産です。そもそも人には個性があります。つまり強みやワークスタイル、価値観などが異なります。また経験や知識、スキルに違いがあります。知識は事実上、組織に属している人の中にあります。
これらのヒトを第一の目的、組織が社会において特有の役割(ミッション)を果たすために役立てることがマネジメントには求められています。そのためには強みやワークスタイルという個性を発揮し、保有している知識やスキルを用いて成果をあげる必要があります。
本質的に組織という道具が人を育成できる訳ではありません。その意味では「組織に所属する人を成長させる」という表現は比喩にすぎません。逆に組織に属する人は、組織という道具を使って自らを成長させなければなりません。
成長するのは一人ひとりの意志に委ねられます。「馬を水飲み場に連れて行くことはできるが水を飲ませることはできない」のと同じです。
【マネジメント原理3】
組織は一人ひとりの自己成長の場である
個人のニーズも満たすことは人材難時代では必須
基本的に人の成長は個人のニーズに由来するものです。組織は道具にすぎませんから、個人のニーズを充足する目的をもつことは何ら矛盾するものではありません。会社や組織に使われるのではなく、積極的に社会的な道具である組織の使い方をマスターして、組織を使いこみましょう。個人の成長は、そこから生まれます。
自己成長は自己実現という言葉に置き換えることもできます。ポイントは「自己」です。多くの人が人生の過半を過ごす職場。その場で提供される「仕事」は自己の成長の手段となる有難い存在です。課題もまた成長の手段になりえます。
厳しい人材難の時代に<組織で働く人の成長>を実現することは組織力の基盤を強固にする重要ポイントです。組織の目的の再確認が求められます。
原理のマネジメントが必要な理由
第1回目は、原理がマネジメントにいかに必要かについて触れています。<方法ではなく原理を手にすること>の大切さについては何度も確認して欲しいと思います。
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