政府の発表によると、10年続く会社は全体のわずか6.3%だという。会社の存続を脅かす要素は、大まかに分けると「外部要素」と「内部要素」の2つある。
外部要素とは、市場の変化(顧客ニーズの変化)のことだ。顧客が求める価値は何なのかを常に問い続け、変わりゆくニーズを捉えなければ、事業が陳腐化し、倒産のリスクが急激に高まる。
そして内部要素は、ズバリ組織の崩壊である。独断的な経営になったり、優秀な人材がことごとく流出したり、社員が他を連れて独立したりなど、組織内部で起こるさまざまトラブルが原因で事業を続けられなくなるケースだ。
私たち「Dラボ」は、全国でオンライン読書会を運営している。数多くの経営者と関わり、挫折と成功のドラマをたくさん見てきた。これまでを振り返ってみると、組織崩壊の憂き目にあい、大変な思いをする経営者は、けっして少なくなかった。
そこでこの記事では、組織が崩壊する理由と、崩壊する組織にありがちな特徴を解説するとともに、組織崩壊を経験し、立ち直ってきた経営者が実践した改善策・予防策を紹介する。
この記事を読めば、人のマネジメントこそ、組織の要であり、事業のミッション(使命)が曖昧な会社ほど、崩壊のリスクが高まることを理解できるようになるだろう。
目次
組織崩壊とはどんな状態をいうのか
- 派閥ができて組織の分断が起こった
- 退職が連鎖して人がいなくなる
- クレームが多発して対応しきれなくなる
- 不正を黙認する組織文化になっていた
「企業は人なり」と言われるように、組織の本質は人である。ほとんどの場合、組織崩壊は人のマネジメントの問題に起因する。
組織崩壊が起こる主な兆候
- 辞めないと思っていた人が辞めた
- クレームが多くなる
- コミュニケーション不全でミスが多くなる
- 派閥ができている
- プロジェクトがなかなか終わらない
ポイントはコミュニケーションだ。ミスやクレームの多発、プロジェクト進行の停滞は、組織内の意思疎通が不全に陥っている黄色サインと考えよう。また、辞めないと思っていた人が辞めてしまうケースも、要注意である。そのような人が組織の問題を察していないことは、まずありえない。必ず思うところがあるはずだ。
崩壊しやすい組織が当てはまる特徴
- お金を働く価値の動機に置いている
- 数字しか見ていない
- マイクロマネジメントが蔓延している
- 人材育成が属人的になっている
- 部署間の対立構造がある
- 言われたことしかできない人が多い
- 社長のカリスマ性が頼りになっている
- 社長自身がスタッフとのコミュニケーションを恐れている
金銭的動機でモチベーションを維持しようとする経営者も少なくない。Dラボはこれまでたくさんの事例を見てきたが、働く価値の中心にお金を据えている事業は、たいてい失敗している。むしろ、お金こそすべてという価値観のために、不正や犯罪という結末を迎えることさえある。
組織崩壊を防ぐために経営者がやるべき改善策
Dラボは「いままさに組織崩壊中で、大変なことになっている」という人も多く見てきた。しかし諦めずにできることを精一杯探して、組織の在り方を見つめなおして、危機を乗り越えた人がたくさんいた。以下に紹介するのは、数々の経営者が実践してきた組織崩壊を防ぐ改善策だ。
①会社の存在意義を明確にする
ほとんど常に、事業の目的とミッションを検討していないことが失敗と挫折の最大の原因である。
(ドラッカー『マネジメント』)
何のために会社(事業)があるのか。世の中のどんな人に貢献しているのか。会社の存在意義を、あらためて見つめなおし、働く人たちに共有していこう。とくに「貢献」は大きなキーワードとなる。貢献から仕事を考えると、自主性が自然と育っていく。
実際の事例については、『売上あげたいなら数字にこだわるな!?「売上はありがとうの数」と再定義して売上UPと社員の主体性を両立した美容室の成功事例』の記事をぜひ参照いただきたい。
②ミッション(使命)を明確にする
重要なのはカリスマ性ではない。ミッションである。したがってリーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。
(ドラッカー『非営利組織の経営』)
会社のミッション(使命)は、事業が目指すべき到達点であり、どんな状況でも道を失わないための北極星である。ミッションなき経営は、羅針盤を持たないまま大海原へ航海に出るようなものだ。Googleやマイクロソフトに多大な影響を与えた“マネジメントの父”ことドラッカーは、どんなにすごい経営者と会うことがあっても、必ずミッションを尋ねたという。
③ミッション実現のための共通言語をつくる
「共通言語」とは、組織の価値観やフィロソフィー(哲学)を体現した言葉である。たとえばGoogleは、意見や主張が起こったときに、「それはユーザーのためになるのか?」を必ず問いだすという。まさしく共通言語である。
共通言語を組織に浸透させる方法
共通言語をつくって終わりにするわけにはいかない。組織で働く人々の血肉となり、一人ひとりがすぐれた意思決定を行えるようにしなければならない。共通言語を、組織の文化として醸成しなければならない。共通言語を浸透させる方法を以下に3つ示した。
①朝礼で共通言語を確認する
多数の人と共通言語をシェアしたい場合に有効である。社員手帳に共通言語を記しておくと、朝礼で確認しやすい。
②1on1ミーティングで確認し合う
共通言語をベースに、上司が部下の日々の仕事についてフィードバックすることもできる。共通言語を尺度にすれば、部下の意思決定の質を評価しやすくなるだろう。
③みんなで読書会を行う
札幌市交通局で約700人の職員の士気を高め、成果をあげた田畑部長(2014年当時)は、実際にドラッカーの読書会で共通言語を得ることができたという。
やや長くなるが、田畑部長の言葉を引用しよう。
実際のインタビュー記事私達の目標の一つに、輸送人員を地下鉄60万人、路面電車2.5万人にしたい、ということがあるのですが、その前提として「安全があってはじめて」という基本があります。その上で、駅員が親切だとか、笑顔のあいさつがあるといった付随する価値があります。これらすべてをひっくるめて、ドラッカーのいう「顧客の創造」つまり利用者にとっての価値を生み出すことを事業のコンセプトに据えています。
こういった職場の土壌形成にあたり、読書会を通じて「共通言語」ができ、ベクトルが一致したことが非常によかったことですね。強みを活かす、貢献を重視するなど職場の価値観が共有されることで仕事がやりやすくなりました。
例えば、会議などの意思決定の最後には、「これはドラッカーの原理原則に反してないか?」という議論でチェックが始まるんです(笑)。そういう思考回路や職場風土が醸成されてきました。
Dラボは読書会のプロ集団
わたしたちDラボは、“マネジメントの父”ことピーター・F・ドラッカーの読書会を運営している。ドラッカーの読書会は、経営者だけでなく、マネジャーや新人までが、互いの興味・関心・視点での違いを意識しつつ、成果をあげるためのマネジメントを学び合う場だ。
読書会ではアウトプットをとても大事にしている。実際にわたしたちは、この読書会を通じて、「これまで主体性のなかった社員が自発的に提案をしてくれるようになった」「経営者目線で事業のことを真剣に考えてくれるようになった」という事例をたくさんみてきた。
経営に活かした事例ドラッカーの読書会は、経営者と社員が同じ問題意識をもち、同じ目線で学びあえる貴重な機会だ。
もしあなたが、共通言語づくりだけでなく、「リーダーシップを発揮できない」「人材育成がうまくいかない」「人材が定着しない」「売上が伸びない」「事業の将来に不安がある」「相談相手がいない」と悩んでいるなら、ぜひ一度、社員と一緒に読書会に来てほしい。無料体験も実施中だ。オンラインで開催しているため、全国の経営者やビジネスマンとつながれる貴重な機会にもなるだろう。
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当サイトDラボを運営しております。
ドラッカーを学んだ経営者やビジネスマンが実際に仕事や経営に活かして数々のピンチを乗り越え、成功を収めた実例を記事形式で紹介しています。
また、「実践するマネジメント読書会」という、マネジメントを実践的に学び、そして実際の仕事で活かすことを目的とした読書会も行っております。
2003年3月から始まって、これまでに全国で20箇所、計1000回以上開催しており、多くの方にビジネスの場での成果を実感していただいています。
マネジメントを真剣に学んでみたいという方は、ぜひ一度無料体験にご参加ください。
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