「情報はマネジャーの道具である。その情報は話し言葉であり、書き言葉であり、数字である」『現代の経営』
マネジメントにおいて言葉は道具です。
その2で「一言を実践する」ことの重要性をポイントとして挙げました。
また、その言葉(情報)を知識として身につけることがマネジメント能力を身につけることであることをその3で確認しました。
さらにマネジメント能力を身につけるには習慣化することが重要であることをその4で示しました。
以上が情報を知識(能力)に転換するプロセスですが、その入り口にあるのが九九を憶えたように言葉を記憶することです。
どんなときでも九九を道具として使うことができるということは、記憶に格納している情報を必要な時にはいつでも取り出せる状態にあることを意味します。マネジメントに関する言葉を使うということもまったく同じです。
たとえば私は、『創造する経営者』にある「事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである」という言葉をそらんじることができます。
この言葉は事業の定義です。何かの方法をを示している訳でもないこの言葉は、記憶していただけでは、使えません。たとえば次のように使います。
この言葉を記憶していると寝る前でも、湯船に浸かっているときでも、どんなときでも事業について考えることができます。つまりこの事業のプロセスはどのように組み立てようか。プロセスで弱いところはどこか、欠けているところはどこかなどを考えることができます。
次に、そのプロセスから生み出される経済価値について考えることができます。これは付加価値であり、顧客価値です。顧客は何に価値を見出しているのだろうかと考えることができます。重要な問いです。また価値は、事業というプロセスのどこで付加されているのか(付加価値)についても考えることができます。
さらに、その価値を生み出している知識について考えることができます。多くの場合、顧客に支持される価値は、何らかの強みや卓越性により生み出されています。これらの知識と呼びます。わが社の卓越性についていつでも考えることができます。
言葉を記憶しているだけでは、何も起こりませんが、記憶していない言葉はそもそもつかえません。道具を手にしていないということです。道具なしにマネジメントを行っているということです。ですから記憶した言葉は、ことあるごとに使って自分の身体能力の一部にする必要があります。
組織の能力も同じです。多くの人が発揮できる能力になっていてはじめて成果に結びつきます。たとえば、先の事業定義を記憶している人が集まる会議と事業に関してバラバラの理解やイメージをもった人が集まる会議の生産性が格段に違うことは容易に理解することができます。
あなたは、どんな道具(言葉)をもってますか?
ポイントをまとめておきます<実践の秘訣 その6>
①言葉を記憶することから始める
②記憶した言葉を実践で使ってみる
③記憶した言葉を繰り返し使い身体能力化する
ここまでの連載
その1:最初から理解しようとしない
その2:失敗してもやめない
その4:習慣になるまでトレーニングする
その5:何を習慣にするかを明確にする
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