ドラッカー「リーダーシップ」の意味を徹底解剖。才能は必要ない!初めて部下を持つ人でもリーダーシップを発揮できる極意を解説します

ドラッカー「リーダーシップ」の意味を徹底解剖。才能は必要ない!初めて部下を持つ人でもリーダーシップを発揮できる極意を解説します

「経営者としてリーダーシップを発揮するにはどうすればいいのか」

「部下に信頼される上司になるにはどうすればいいのか」

「いま自分に必要な資質は何なのか」

このような悩みを抱えている人は多いはずである。

リーダーシップは、一般的にはよく「人を導く資質」という観点で語られるが、それを実践する方法については、あまり具体的に解説されていないように思える。

あなたも、リーダーシップを身につけたくて調べてみたものの、解説記事を読んで「それができたら苦労はしない」とガッカリしたことはないだろうか。

リーダーシップは実践できなければ意味がない。

そこで本記事では、「マネジメントの父」と称されるピーター・F・ドラッカーのリーダーシップ論を解説しながら、誰でもリーダーシップを発揮する方法の極意を紹介していく。

この記事を読めば、ビジネス小説や映画に登場するような“カリスマ性”が、実はリーダーシップには何の意味もないどころか、組織に害すら与えてしまうことに気が付くだろう。

そして、リーダーシップに必要なのが、「組織のミッションを行動で示す真摯な態度」であることを理解し、明日から行動に移せるようになる。

リーダーシップを発揮して組織や部下を動かしていきたいという方は、ぜひ読んでほしい。

リーダーシップとは?一般論とドラッカーの考え方を比較

リーダーシップとは?一般論とドラッカーの考え方を比較

以下では、一般的なリーダーシップ論とドラッカーのリーダーシップ論とを比較しながら、ドラッカーの独自性を浮き彫りにしていく。

リーダーシップ論の比較
一般論ドラッカー
リーダーシップとは?部下を惹きつける上司の「資質ミッション(使命)を全うする「仕事
リーダーシップ論の焦点個人組織のミッション

一般的なリーダーシップの定義は「個人」が焦点

ビジネス書から経営学理論まで、細かくみると「リーダーシップ」の定義は多岐にわたる。それらを総括してまとめてみると、だいたい以下のようになる。

  • 目標実現のビジョンを示すことができる
  • スタッフを励ましてモチベーションを維持する
  • メンバーが主体性を発揮できるよう働きかける
  • 発想力に富んでいる
  • 決断力がある
  • 行動力がある
  • 部下から信頼されている

以上みたように、一般的なリーダーシップ論では、基本的には「個人」そのものにフォーカスが向けられている。「上司としてどのような人物であることが理想か」という視点で語られることがほとんである。

ドラッカーのリーダーシップの定義は「ミッション」が焦点

一方のドラッカーは「個人」ではなく、「ミッション」にこそリーダーシップの本質があると考えた。

先立つものが組織の「ミッション」(使命)であり、それをトランペットのようにスタッフに知らしめていくことがリーダーの役目なのである。

ではミッションとは何か。ミッションとは、“なぜ事業を行うのか”という組織の存在理由のことである。

ミッションとは
使命、任務。「何のために事業を行うのか」という企業の存在理由に関わるもの。“誰に貢献するのか”、“どんなことで社会の役に立ちたいのか”という「組織の外側」に視点が向けられている。

(ミッションのつくり方についてはこちらの記事で詳しく解説している)

リーダーとはあくまでも、ミッションを行動で示し、ミッションにもとづいて正しい意思決定を下す「仕事」なのである――ドラッカーはそう考えたのだ。

ドラッカーはリーダーシップをこう考える!

  • リーダーシップにカリスマは必要ない
  • カリスマはリーダーを破滅させる
  • リーダーシップに“スタイル”はいらない
  • 育てるのではなく、自己成長できる機会を与えるのがリーダーシップ
  • メンバーの自主性に必要なのはリーダーではなく「ミッション」である
  • リーダーに必要なのは発想ではなく一貫性である
  • リーダーシップはメンバー全員が発揮するべきものである

ドラッカーによるリーダーシップの定義

以下に、ドラッカーがどのようにリーダーシップを定義したのかを整理した。

  • リーダーシップとは、「行動」が本質である
  • リーダーシップとは、組織の使命に矛盾しないように判断を下す「仕事」である
  • リーダーシップとは、地位や特権ではなく「責任」である
  • リーダーシップとは、一貫性のある言動で模範を示す「信頼」である

リーダーシップが組織にもたらす効果とは?

リーダーシップが組織にもたらす効果とは?

それではなぜ、組織にはリーダーシップが必要なのだろうか。ドラッカーの金言を参考にしながら、あらためてリーダーシップの意義について考えてみよう。

①スタッフの自主性が育まれる

組織の使命(ミッション)を行動・言動で示し、部下に影響を与える。リーダーはまさに「トランペット」のようなものだとドラッカーはいった。

ミッションとは、組織の存在理由そのものである。ミッションは、スタッフの視座を高くする。“顧客に貢献するためにはどうすればいいのか”という自主性が自然と生まれる。

②スタッフの貢献意識が高まる

貢献意識はスタッフの可能性を押し広げる。貢献意識が豊かなアイデア提案をもたらす。

だが貢献意識を「カネ」で生み出すことはできない。カネでしか動けない人間は言われたことしかできない。それどころか、自己保身や不正に走らせてしまう。

貢献意識はミッションから生まれる。ミッションを共有するのは、リーダーの仕事であり、責任である。

③妥協する場面でも一貫性のある意思決定ができる

組織の運営は意思決定の連続である。日々刻々と変わっていく現実を目の前に、リーダーは意思決定を迫られる。

最高の成果を目指すべきではあるが、ときには妥協を余儀なくされることもあるだろう。しかしそんなときにこそ、大きな落とし穴がある。目先の問題に囚われるあまり、間違った妥協をしてしまう恐れがある。

妥協を迫られる状況でも正しい意思決定ができること。それがリーダーシップの条件の一つである。そのためには、やはり組織のミッションを正しく理解していなければならない。

「リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく、望ましいかを考え抜く。(中略)その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まる」

(ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)

リーダーシップを身につける10訓

リーダーシップを身につける10訓

ドラッカーは「真のリーダー」と「似非リーダー」とを区別している。以下に、ドラッカーが論じたリーダーシップ論を10訓として整理した。ぜひ参考にしてほしい。

リーダーシップ10訓
  • 真のリーダーは、言動に一貫性がある
  • 真のリーダーは、組織の使命に矛盾がないように意思決定をする
  • 真のリーダーは、責任は常に自分にあると理解している
  • 真のリーダーは、部下を恐れない
  • 真のリーダーは、優秀な部下を自らの誇りとする
  • 真のリーダーは、自分が去った後に組織が崩壊することを恥とする
  • 似非リーダーは、自らのカリスマ性で破滅する
  • 似非リーダーは、柔軟性がなく、変化を恐れる
  • 似非リーダーは、地位や特権を守るために部下を恐れる
  • 似非リーダーは、自分が組織の支配者であると錯覚する

おわりに:一人ひとりがリーダーシップを高めるために

一般的なリーダーシップ論の特徴「個人」が焦点
ドラッカーのリーダーシップ論の特徴「ミッション」が焦点
ドラッカーのリーダーシップ論の定義・リーダーシップとは、「行動」が本質である
・リーダーシップとは、組織の使命に矛盾しないように判断を下す「仕事」である
・リーダーシップとは、地位や特権ではなく「責任」である
・リーダーシップとは、一貫性のある言動で模範を示す「信頼」である
リーダシップが組織にもたらす効果・スタッフの自主性が育まれる
・スタッフの貢献意識が高まる
・妥協する場面でも一貫性のある意思決定ができる

「真のリーダーは、他の誰でもなく、自らが最終的に責任を負うべきことを知っているがゆえに、部下を恐れない。ところが、似非リーダーは部下を恐れる。部下の追放に走る。優れたリーダーは、強力な部下を求める。部下を激励し、前進させ、誇りとする。部下の失敗に最終的な責任をもつがゆえに、部下の成功を脅威とせず、むしろ自らの成功と捉える」

(ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)

「リーダーシップを発揮するには?」

この問いに対する核心的な答えは、「組織のミッションを行動で示す」である。リーダーに必要なのは、才能やカリスマではない。ただひたむきに、組織のミッションに誠実であることが、リーダーシップの本質である。

今回紹介したピーター・F・ドラッカーは、現在でも多くの実業家に読み継がれるビジネスマンのバイブルである。当記事ではいくつかドラッカーの言葉を引用したが、少しでも琴線に触れるものがあれば、ぜひ一度、ドラッカーの著作を手に取ってみてほしい。

以下に、ドラッカー学会理事の佐藤 等がチョイスしたおすすめドラッカー本を紹介している。

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