信頼していた部下に退職を告げられた時のショックは計り知れないでしょう。
この記事では、部下が退職してしまった原因やその前兆、また退職したいと部下に言われた時の対処法を解説します。さらに、この経験を次に活かすための考え方を紹介します。
私達Dラボは、経営学の父、ピーター・F・ドラッカーの著書から仕事の極意を学ぶ実践するマネジメント読書会®を開催しています。「部下がやりがいを持って仕事ができる」そんなリーダーが日本中に溢れることを、私達は目指しています。
目次
信頼していた部下が退職する原因
辞めることを上司に伝えたり、転職先を探したりと、退職は多くのエネルギーを使います。それでも退職をしようとしているのは、それ以上のメリットが社外にあるか、それ以上のデメリットが社内にあると、部下が感じているからです。信頼していた部下が辞めてしまう原因を詳しく見ていきましょう。
上司に不満を抱えている
「社員は、企業を去るのではなく、上司のもとを去るのだ」といわれることがあるほど、上司への不満や、上司との関係悪化は退職の原因になります。
まず考えられるのは、信頼できる部下をえこひいきしていることです。辞めようとしている本人はひいきされているんだからいいじゃないか!と思われるかもしれません。ですが、信頼できる部下は、他の部下へのあなたの接し方もよく見ているのです。部下によって接する態度を変えていると、器量の無い上司だと判断されてしまいます。
また、あなたは、部下の話に耳を傾けていますか?日常的な会話や些細な相談であっても、その一つ一つの受け答えの仕方で、より重い相談ができるかどうかを、部下は判断します。退職を視野に入れたキャリアの相談は、切り出しにくいものですから、相談しやすい環境を作れていたかを振り返ってみてください。
上司の仕事の采配に問題がある可能性もあります。信頼していた部下は、ひょっとすると自分の強みを活かす仕事ができていないと感じていたかもしれません。そうであれば、部下の強みを把握し、それを活かすチームマネジメントができていなかった可能性が考えられます。
他にも、業務負担が大きすぎた場合も考えられます。部下を信頼するあまり、ついつい重い仕事を振っていませんでしたか?部下も期待に応えようと頑張ったものの、限界が来てしまったのかもしれません。
待遇に不満がある
働く上で「待遇」は非常に重要です。転職サイトが普及したため、同じ仕事でも好条件で働ける職場を見つけやすくなり、転職のハードルが下がりました。福利厚生や給与は生活に直結するものです。不満があると社外に目が向いてしまうのは当然でしょう。
また、頑張っているのに、正当な評価を受けられないという不満があると、退職の可能性は大きく上がります。ほとんどの人が自身の能力や成果を正当に評価してくれる会社で働きたいと願っているからです。さらに、自分よりも成果を上げていない社員が評価されていると、会社への失望感が大きくなります。
やりがいの喪失
仕事に対するやりがいを感じられなくなることも、大きな原因と言えます。就職したての頃は、できることがどんどん増えていくので、成長している実感が得られやすいです。しかし仕事に慣れてくると、成長速度が下がったように感じられます。成長意欲の高い人は、挑戦できる環境を求めています。責任や裁量のある仕事を任せられなかったために、やりがいを感じなくなってしまったかもしれません。
また、成果を出せずに苦しんでいる可能性もあります。その原因の一つとして、部下の強みが活かされていないことがあげられます。ドラッカーは数多くの著書を通して、「人が成果をあげるのは強みによってのみである」と繰り返し主張しています。
成果はやりがいに深く関わっています。強みが活かせず、弱みが表に出る仕事を続けさせられれば、成果を出せず、自信を失っていくでしょう。
社内の人間関係に疲れた
上司が見えていないところで、人間関係のトラブルがあったのかもしれません。いくら仕事が好きでやりがいを感じていても、居心地の悪い職場には行きたくないですよね。
部下に退職すると言われた時の対処法
信頼していた部下から退職の申し出があった時は非常につらいですが、なんでこうなってしまったんだろうと後悔する前に、これからどうするかを考えましょう。上司と話していくうちに考えが変わった、という場合もありますので、積極的に部下と向き合いましょう。
落ち着いて退職理由を聞き出す
落ち着いて退職理由を聞き出すことが大切です。感情的になってしまえば、部下は本音をしゃべりにくくなってしまいます。退職の旨を伝えるのは勇気のいることです。まずは、部下の理由を否定せず、受け止めましょう。
その上で、会社の都合ではなく、キャリアを積んできた一人の社会人として、客観的なアドバイスができるとよいです。部下は誰にも相談することなく、退職を決めたのかもしれません。引き留められるかどうかは関係なく、客観的なアドバイスは、部下のキャリアの為になります。
部下と話す際は、他の社員に気付かれないよう、一対一の面談を行うのがベストです。他の社員に知られてしまうと、部下が働きづらくなり、退職を撤回もしづらくなります。
辞めると言っている時点で、本人の意志は固いのだから話すだけ無駄だ。そう思われるかもしれません。また、スムーズに退職する為に建前を使う部下もいます。しかし、退職理由をヒアリングすることは重要です。もしかするとその原因は、他の部下も同様に抱いている悩みかもしれないからです。放っておくと、退職者がさらに増えかねません。
退職を回避できないかを話し合う
辞めたい理由が把握できたら、退職を回避できないか話し合いましょう。キャリアパスや業務量が原因である場合は、解決方法を提示することで退職を回避できる可能性があります。また、人間関係が原因であれば、当事者達に直接話し合ってもらう必要があるでしょう。
もし、原因があなた自身にあった場合は、すぐに改める姿勢を見せることが重要です。
回避できないときは速やかに引き継ぎする
解決策を提案しても部下の気持ちが変わらない場合は、上司は気持ちを切り替えて速やかに引き継ぎをしましょう。部下の退職は社内の問題です。クライアントの迷惑にならないように気をつけましょう。
部下の転職先には注意が必要です。同業他社の場合は、会社のクライアントを奪われる危険性があります。
部下が退職する前の前兆
信頼していた部下の突然の退職も、部下にとっては、「いきなり」ではないのです。部下の退職の前兆が掴めれば、退職の意思が固まる前にこちらから話しかけることできます。
見た目の変化

髪型や服装などに明らかな変化がある場合は、別業種への転職活動を行っている可能性があります。身だしなみが乱れ始めたときは、部下がこの会社での評価や評判はどうでもいいと感じ始めたサインかもしれません。
業務のモチベーションの低下
以前は積極的だったのに、言われた仕事だけをやるようになったり、集中力が欠けている場合は、モチベーションが低下していると言えるでしょう。トイレ休憩等の離席が増えることはサインの一つです。
コミュニケーションの消極化

前までは明るくあいさつを交わしていたのに、顔色が暗かったり返事が小さかったりしていないでしょうか。また、特別な理由も無いのに、飲み会に参加する回数が減っているかもしれません。周囲との雑談が減り、最低限の仕事の話をするようになったら注意しましょう。
遅刻・欠勤の増加

いつもは余裕をもって出勤していた部下が、始業ギリギリに来るようになり、欠勤が増えた場合は、仕事に気が向かず、悩みや不安を抱えている可能性があります。仕事を休んで転職活動をしているかもしれません。
部下の退職を防ぐ方法
ここからは、今回の経験を活かし、同じことを繰り返さないための方法を考えていきましょう。部下とのコミュニケーションを増やすことと、会社の目的を共有することがポイントです。
部下とのコミュニケーションを増やす
部下のことを常に見張れる訳ではありません。コミュニケーションを直接取ることで、部下のサインを見つけやすくなります。悩みや不安がないかをこまめにヒアリングしましょう。
また、書類を渡すときに、感謝の気持ちを一言書いた付箋を貼るのも効果的です。こうしたちょっとしたひと手間が、部下に安心感をもたらしてくれます。
ですが、コミュニケーションを増やそうとしても、意識するだけでは継続は難しいですよね。効果的なのは1on1ミーティングを習慣化することです。まとまった時間を確保できるので、キャリアなどの深い話にも踏み込みやすいでしょう。
1on1ミーティングについてさらに知りたい方は、効果的なフィードバックと、1on1ミーティングのやり方を解説した以下の記事がおすすめです。
会社の目的を共有し、納得を得る
会社のビジョンを共有することは非常に重要です。目の前の仕事に追われていると、会社が存在している一番の目的である「社会に貢献すること」が見えにくくなります。日頃から会社のビジョンを共有する機会を作り、納得感を持って仕事してもらうことで、部下のモチベーションがあがります。
部下の育成・マネジメントを学ぶには
経験から学べることは非常に多いです。ですが、信頼していた部下が辞めるという経験は、できるだけしたくないですよね。部下の育成やマネジメントを学ぶことで、苦い経験をせずに上司としてレベルアップできます。
おすすめなのは、ドッラカ-です。仕事や企業の本質を突いたドラッカーの教えは、時代を超えて今も絶大な支持を得ています。
しかし、ドラッカーの著書は難解で分厚く、手に取りにくいのが現状です。学びたい意欲があっても、挫折してしまう人が少なくありません。
そこでおすすめなのが、実践するドラッカー[思考編]です。この本はドラッカー入門書として非常に人気です。
20枚の実践シートを使って、今の自分に当てはめながらマネジメントを学べるのが特徴です。
自ら考え、決定し、行動する。この本を読めば、そんな主体性のあるチームの作り方が分かります。
まとめ
今回は、部下がいきなり退職してしまう原因や兆候、上司がとるべき行動などについて紹介しました。部下の退職は、決して上司のせいとは限りません。ですが上司として必要な対処を早めにしておけば、部下が追い詰められて辞めるリスクを少しでも減らすことができるでしょう。
部下の様子を一番間近で観察できるのは、職場の上司です。ぜひ日頃から部下とコミュニケーションを密にとって、メンタルケアを心がけてください。1on1ミーティングは非常に有効ですから、是非活用してみてくださいね。
しかし、部下の育成やマネジメントは、一朝一夕で身につくものではありませんし、独学で習得するのも困難です。
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